長銀事件逆転無罪判決の闇 by 植草一秀
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post_bc2f.html
旧日本長期信用銀行の粉飾決算事件で、最高裁判所は7月18日、執行猶予付き有罪とした1、2審判決を破棄、元頭取ら3人に逆転無罪を言い渡した。(*)
刑事事件で最高裁が逆転無罪判決を出すのは極めて異例である。
日本の三権分立はおとぎ話である。内閣総理大臣が三権を掌握し得るのが実態である。政治権力は司法、警察、検察に対しても支配力を及ぼすことが可能である。
今回の最高裁判決の真のターゲットはこの事件にはないはずだ。旧長銀と類似した事案で裁判が行われている「日債銀事件」が謎を解く鍵である。
「日債銀事件」では大蔵省OBで国税庁長官を務めた窪田弘氏が起訴され、1審、2審で執行猶予付き有罪判決が出されている。
大蔵省、財務省は、同省最高幹部を経て日債銀に天下りした窪田氏の有罪確定を回避することを最重要視してきた。
長銀事件が最高裁で逆転したことが、日債銀事件に影響する。
日債銀事件で同様の逆転無罪判決が出されるなら、ここに示した仮説が間違いでないことが判明すると考える。
日本の権力構造の闇は限りなく深い。
長銀事件逆転無罪判決の闇(2)
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/2_870f.html
旧長銀粉飾決算事件における異例の最高裁逆転無罪判決の裏側に、財務省主軸「官僚主権構造」の闇が存在することは、確かであるように思われる。
旧日本長期信用銀行の粉飾決算事件で最高裁判所は7月18日、1、2審で執行猶予付き有罪判決を受けた元頭取ら3人に逆転無罪を言い渡した。この問題に関連する追記。
担当裁判官の一人である、津野修最高裁判所判事の経歴は以下の通り。
1961年 国家公務員採用上級試験合格
1961年 司法試験合格
1962年 京都大学法学部卒業
1962年 大蔵省入省
1967年 板橋税務署長
1971年 日本貿易振興会フランクフルト事務所駐在員
1978年 内閣法制局参事官
1983年 大蔵省主税局税制第三課長
1985年 福岡財務支局長
1986年 内閣法制局第三部長
1992年 内閣法制局第一部長
1996年 内閣法制次長
1999年 内閣法制局長官
2003年 弁護士登録(第一東京弁護士会所属)
2004年 2月26日- 最高裁判所判事
(出典 Wikipedia)
判決の真の狙いは、「日債銀事件」の被告人の一人である、旧大蔵省最高幹部で国税庁長官を務めた窪田弘氏の無罪獲得にあると考えられる。
日本は暗黒権力の下に統治されている。

まあ、お金で支配するのが基本ですのでね。
参考*
旧長銀元頭取ら最高裁で異例の逆転無罪 2008.7.18 15:14
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080718/trl0807181517006-n1.htm
破綻(はたん)した日本長期信用銀行(現・新生銀行)の粉飾決算事件で、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と商法違反(違法配当)の罪に問われた元頭取、大野木克信被告(72)ら旧経営陣3人の上告審判決が18日、最高裁第2小法廷であった。中川了滋裁判長は、3人を執行猶予付きの有罪とした1、2審判決を破棄、3人に無罪を言い渡した。4人の裁判官の全員一致の判決で、3人の無罪が確定する。最高裁での逆転無罪は異例。
この事件は、破綻した金融機関の旧経営陣に対する刑事・民事両面の責任追及をうたった「金融再生法」の適用第1号だった。判決は、争点がほぼ同じ日本債券信用銀行の粉飾決算事件にも影響を与えそうだ。
ほかに判決が言い渡されたのは、元副頭取の須田正己(68)と鈴木克治(71)の両被告。1、2審判決は、大野木被告を懲役3年、執行猶予4年、須田、鈴木両被告を懲役2年、執行猶予3年としていた。
争点は、平成10年3月期決算当時、関連ノンバンクの不良債権を査定する基準は何だったのか、だった。
旧大蔵省は平成9年、厳格な不良債権処理を求める「資産査定通達等」を出し、これに基づいて決算経理基準も改正した。それ以前は、不良債権処理の先送りを容認する基準(旧基準)が用いられており、長銀は旧基準で決算処理していた。
中川裁判長は、「改正基準はガイドライン的なもので、適用するかは明確になっていなかった」と指摘。さらに、10年3月期には大手銀行18行のうち14行が、長銀と同様に旧基準で決算処理していたことなどを挙げ、「多くの銀行は、不良債権査定で改正基準に従わなければならないと認識していなかった」と述べた。
その上で、「当時は過渡期的な状況だった」と判断し、「旧基準を使って関連ノンバンクの不良債権を査定することは、資産査定通達等の示す方向性を逸脱するものであったとしても、違法とはいえない」と結論付けた。
古田佑紀裁判官(検察官出身)は補足意見で「企業の財務状況をできる限り客観的に明らかにするという企業会計の原則からすると、長銀の決算には大きな問題があったことは明らかだ」と述べた。
この裁判の1、2審は、改正基準が唯一の不良債権査定基準だったと判断し、3人を有罪としていた。
【起訴事実】大野木被告ら3人は共謀して10年6月、同年3月期決算では不良債権が約5800億円あったのに、約3100億円を回収可能なように装うことによって約2700億円に圧縮した有価証券報告書を大蔵省に提出。また、株主に配当できる余剰金が皆無だったのに約71億円の配当をした。
【日本長期信用銀行】長期信用銀行法に基づき昭和27年に設立。金融債を発行して長期に渡る安定的資金を調達し、この資金を鉄鋼、電力、海運などの、いわゆる基幹産業に長期間融資することを目的にしていた。しかし、バブル期に不動産融資が急増。バブル崩壊後に多額の不良債権を抱え、経営危機に陥った。平成10年10月に破綻。12年、国際投資事業組合に買収され、新生銀行として再スタートした。
++
橋下徹大阪府知事と上杉鷹山
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post_cd88.html
橋下徹大阪府知事の行動を無条件で賛美するマスメディアの裏側には、大きな政治圧力が働いている。
「居酒屋タクシー」、厚生労働省職員のネットカフェ労働、大阪府の職員給与引き下げ、など、役人を攻撃する素材が次々と取り上げられている。
「偽装CHANGE勢力」は8月にも「脱藩官僚の会」なるものを立ち上げようとしている。「官僚利権根絶」の旗を掲げる中川秀直氏率いる「上げ潮派」、小池百合子氏率いるTPL、小泉チルドレン、橋下知事らの知事グループ、前原誠司氏率いる民主党分断工作グループ、などが連携する気配が漂っている。
小泉元首相、中川秀直氏、武部勤氏、小池百合子氏、石原伸晃氏、渡辺喜美氏、飯島勲氏、竹中平蔵氏、橋下徹氏、東国原英夫氏、江田けんじ氏、高橋洋一氏、岸博幸氏、前原誠司氏などが連携し、田原総一郎氏、みのもんた氏、北野たけし氏、テリー伊藤氏などが広報活動を展開する。 (笑い。党名は棄民外資党ですかね?)

(ゾンビ国会のてこ入れ強化ですか?)
石原東京都知事、橋本元高知県知事などがこの政治新勢力に加わる可能性もある。
「偽装CHANGE」勢力は、「官僚利権根絶」の旗を掲げるが、実態は自民党別働隊であり、官僚利権を根絶する意思など持ち合わせていないと考えられる。
総選挙後は自民党と連携する。自民党の権力維持を目的に仕組まれた、世論誘導の三文芝居である疑いが濃厚だ。
小泉氏や中川氏は小泉政権以降の政権中枢に位置し、官僚利権を根絶し得る立場にありながら、過去7年以上も官僚利権を死守してきた。いまさら官僚利権根絶を唱えても誰も信用しない。
渡辺行革相は天下り抑制の素振りを示しながら、確実に天下りを温存する着地点を用意してきた。「格付け会社」に対する金融庁の監督強化も、金融庁の利権拡大行動そのものを示している。
「偽装CHANGE勢力」を立ち上げるに際して、二つの世論拡大が目論まれている。
第一は、官僚部門に大きな無駄が潜んでいることを示すこと。
第二は、官僚部門の悪の根源が一般公務員にあるとすること。
一般公務員に悪の根源が存在することをアピールするのは、公務員によって構成される労働組合を民主党が支持基盤のひとつとしているからだ。
注意深くテレビを見ると、巧みに一般公務員を攻撃する内容に報道が構成されていることが分かる。
橋下知事の財政赤字削減交渉では、知事と労働組合との交渉だけがクローズアップされた。社会保険庁問題では、組合との協約におけるパソコンキーボード操作回数の取り決めだけが繰り返し報道された。
ネットカフェ公務員報道でも、一般公務員の悪事としてニュースが構成されている。
橋下知事が公務時間中に公用車でホテル内のスポーツジムに通っていたことが明らかにされた。7月14日午後2時ころ、府庁から公用車を使い、大阪市北区のフィットネスクラブに行き、午後5時ごろにタクシーで府庁に戻ったという。
知事日程ではこの日の午後7時まで「庁内執務」とされていた。また、14日は人件費や私学助成の削減を盛り込んだ2008年度予算案の審議が府議会委員会で始まったばかりで、「委員会での質疑内容によっては、知事の判断を仰ぐケースもある」(大阪府幹部)状況だった。
橋下知事は、条例で「勤務時間4時間につき15分の有給休息が取れる」と定められていた大阪府庁職員の休息時間について、「たばこを吸うための休息なんてあり得ない」と言い切り、条例で認められている1日2回の15分「有給休息」をなくし、執務時間中は禁煙にする方針を明らかにした。
橋下知事は「税金をもらっている職員が、1日に何度もタバコを吸っては府民の理解は得られない」と述べた。
その知事が、予算審議が行われている執務時間中に公用車でホテルのスポーツジムに通っていて、府職員の理解を得られるとは思えない。
財政運営においては、支出を厳格に査定し、必要な支出を確保する一方で、不要な支出を根絶することが出発点だ。歳出規模を確定したら、その財源を確保する。国からの交付金や支出金、地方の税収で賄うことが基本だ。職員に対する給与は給与水準が適正に決められている限り、必要支出である。
「財政赤字が存在するから府職員の給与を切る」のは間違いだ。ヒトラーが「ユダヤ人が諸悪の根源だ」との世論を形成して、ユダヤ人を迫害し、一般市民の不満のはけ口としたことと共通する手法が用いられているように思える。
府職員をスケープゴートにし、府職員を虐待することによって一般府民の人気を得ようとする手法はあまりにも安直である。府職員の生活権、労働基本権が踏みにじられている。人権尊重を重視すべき弁護士の行動とは思えない。
拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に記述したが、江戸時代中期に米沢上杉藩の再建に尽力した上杉鷹山(ようざん)の藩政改革の姿勢を知るべきだ。
受けつぎて 国のつかさの身となれば 忘るまじきは民の父母
上杉鷹山は財政再建に取り組むために、上格の武士を含めて一汁一菜の食事、木綿の衣服での暮らしを命じる大倹執行の命令を発して率先垂範した。これが真の為政者、改革者の姿だ。
心中には藩の行く末を憂い、民の幸福を願う「経世済民の思想」が脈々と流れていた。
熊本県知事に就任した蒲島郁夫氏は124万円の知事報酬月額を100万円カットして24万円とした。しかし、マスメディアは橋下知事だけを報道し、蒲島知事については一切報道しない。
知事報酬をここまでカットする必要はないが、橋下知事が府職員に給与大幅引き下げを要求するなら、せめて、知事在任期間中は職務に専念し、公務以外の雑所得の受け取りを拒否すべきである。スポーツジム通いは夜間か休日を利用する配慮を示すべきだ。
トップの率先垂範があって職員の意識が高まる。職員の生活給を切り込み、自分は公務外所得を得て、執務時間中に公用車でホテルのスポーツジムでは、職員のモラル低下を知事が促していると言われて反論できない。
府職員にも生活がある。府職員が労働者としての権利を主張するのは当然のことだ。やみくもに給与カットを主張する前に、府職員サービスの質向上に取り組むべきだ。また、一般公務員の給与カットよりも、天下り廃止、天下り機関整理、巨大プロジェクト見直しを優先するべきである。
「偽装CHANGE勢力」は、官僚利権根絶を謳いながら、その実、公務員労働組合攻撃を演出しているのだ。巨悪の高級官僚特権、天下り、天下り機関攻撃は映し出されない。
攻撃しなければならない真のターゲットは、既得権益を維持しようとする既成政治権力そのものである。

既成権力は「偽装CHANGE」勢力を活用して、一般国民の怒りが巨悪にではなく、一般公務員に向かうように誘導している。
次期総選挙では一般公務員を攻撃する「偽装CHANGE勢力」と既成権力がテーブルの下で手を結び、「真正CHANGE勢力」を撃破しようとするだろう。
高級官僚の天下り利権、天下り機関、巨大プロジェクトなどの巨大官僚利権を打破することが「真正の改革」である。
巨悪を温存し、罪少なき一般公務員を虐待することが改革ではない。
「真正CHANGE勢力」は国民にこの違いを明示し、「真正の改革」に直進し、国民が「偽装CHANGE勢力」に欺かれることを阻止しなければならない。

米金融危機:自己責任原則の放棄で米国は弱体化、ドルは凋落 2008年 07月 18日 16:39 JST 森 佳子記者
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-32817520080718
[東京 18日 ロイター] 信用バブル崩壊後の不良債権問題の深刻化で追い詰められた米国は、「自己責任原則」や「時価会計ルール」など米国社会の真髄を貫くルールを自ら放棄しはじめた。
これは急場しのぎとしては有効かもしれないが、世界の信頼を損なうことで、米国の弱体化は加速し、基軸通貨ドルの凋落の歩みを早め、将来に取り返しの付かない禍根を残すことになるとの見方が世界の投資家の間で聞かれる。

<自己責任原則の放棄>
金融界に限らず、米国社会の根幹をなすルールは「自己責任原則」であり、これを法律に例えれば米国の憲法のようなものだ。
しかし、3月に資金繰りに窮した米証券ベアー・スターンズに緊急融資枠を設定して救済をはかったことを皮切りに、このところ米国が様々な場面で自己責任原則を放棄するケースが目立ってきた。
「インベストメント・バンクが先導した信用バブルが弾け、金融界が苦境に陥ったことで切羽詰った米国は、とうとう自己責任原則という『踏み絵』を踏んでしまった」とファースト・インターステート・リミテッド香港社長、中山茂氏は指摘する。
自己責任原則は時価会計ルールと並んで、他国が米国スタンダードを受け入れる際に「フェアな基本理念」として認識され、米国スタンダードは世界的な広がりをみせた。
「これを放棄することは、米国の自己否定を意味し一番の強みを捨てたことになる。今後、米国の信用は、国際的にも国内的に失墜し、弱体化が加速するだろう」と中山氏は予想する。
ベアー救済劇の翌日には、米連邦準備理事会(FRB)が米証券会社に対する連銀窓口貸出(Primary Dealer Credit Facility=PDCF)の開始を発表したが、証券会社は本来FRBの監督外にある業態で、流動性供給はFRBの使命を逸脱した異例の措置だ。
だが、バーナンキFRB議長は、当初は半年間の期限付きだったPDCFを年末を越えて延長する用意があるとまで表明した。
今月14日、米政府は経営難が懸念されている2つの政府系住宅金融機関(GSE)、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)(FNM.N: 株価, 企業情報, レポート)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)(FRE.N: 株価, 企業情報, レポート)の救済に着手、現在は1公社につき22億5000万ドルの融資枠の上限を引き上げ、両公社の資本増強のために株式を購入する方針を表明。さらに連銀窓口貸出枠で資金供与する提案もした。
米国が自己責任原則を放棄してまで、必死にウォール街を救済するのは、マイナス成長やリセッションを回避したいからだ。
だが、著名投資家のジム・ロジャーズ氏は「リセッションはシステムに存在する過剰を取り除くという意味で『善』である」と言う。
「米国が過剰(マネー)にまみれたウォール街を救済して、リセッション回避をはかることは愚かしく、米国は、実際にリセッションを体験するより、はるかに高価な代償を支払うことになるだろう」とし、「無分別な資金供給によって、FRBは自らの衰退を招くだけでなく、激しいインフレを招き、基軸通貨としてのドルの終焉を早めるだろう」とロジャーズ氏は警告する。マネーモーニングとのインタビューで答えた。同氏は米政府のGSE支援について「完全なる自己破滅的行為」と評している。
都合に合わせてルールを変更するということは、米国が政治の世界で何度もやってきたことだ。これが経済の世界でも通用するのか、目下、金融市場に試されている。
ドルに対するバスケット通貨(ユーロ、円、ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフラン)の加重平均値であるドルインデックスは、2001年7月の120.90から4割超下落して3月には過去最低の70.689となった。現在は72台を推移している。
ロジャーズ氏は、米国債はここ1―2年の間に現在のトリプルAから格下げされるだろうと予言する。
<時価会計原則の裏技>

米国は金融機関の決算について、時価会計ルールを早々と放棄し、違法ではないものの異なる会計処理を活用し、国を挙げて金融機関の粉飾決算の片棒を担いでいるとの批判が、米国以外の国々で上がっている。
「かつて米国は、日本に対して時価会計ルールの厳格適用を声高に要求し、日本の金融機関を潰しておいて、自分が困ったときには、勝手にルールをネジ曲げるのは許しがたい」(本邦金融機関)。「時価会計のポイントは、ガラス張りで全体が見渡せることだ。少しでもルールを曲解すれば、全てが台無しになる。米国がフェアなアカウンティングとして世界に売り込んだものを、自らの都合で柔軟運用するとは、呆れて物が言えない」(アジア系金融機関)と絶句する。
米財務会計基準審議会(FASB)は昨年、金融商品の会計処理における公正価値の算出基準としてFAS157号を導入し、米大手金融機関でも採用している。FAS157号の下では、時価会計が適用されるのは、レベル1と呼ばれる資産のみだが、米金融機関保有の金融資産のうち、レベル1に区分されるものは3割にも満たない。他方、時価算定が困難な資産であるレベル3資産は増え続けている。
米国が政府を挙げて支援しているGSEの会計も柔軟運用の一例だ。
「ファニーメイについてはバランスシートで資産の評価が甘いと言える。レベル3資産については十分な引き当て・償却を行っておらず、同公社が保証する債券の引当金(負債サイド)も全く十分とは言えない」と東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏は指摘する。
斎藤氏によれば、ファニーメイは資産がわずか2%目減りしただけで、株主資本を超える損失が発生するほど資本が脆弱な状態で、損失処理ができるほどの資本増強が早急に必要だという。プール前セントルイス地区連銀総裁は「両公社が破たん状態にあると認識するべきだ」と述べている。
斎藤氏によれば米金融機関が活用する会計の裏技には少なくとも3種あるという。
第1に、損失が出ている保有証券を「満期まで保有するつもりで、売却可能で流動性が高い」というカテゴリーに分類することで、「簿価」評価し、評価額の変化が永続的と判断されるまでは「その他包括的利益」に繰り入れる。これによって評価損は表面化しない。
第2に、レベル3資産(流動性も指標もなく各社が独自の推定によって評価する資産)をヘッジするためのデリバティブ資産についてのみ未実現収益を計上し、損益計算書のトレーディング収益に入れる。実際、米投資銀行はレベル3資産から巨額の未実現収益を計上している。
第3に、大きな損失を出した場合は、金融当局に時価評価を一時凍結してもらう。バーナンキ議長は「時価会計は、時に投げ売りを誘って市場を不安定にする側面がある」との認識を示し、「必要であれば一時凍結することもありうる」ことを示唆している。
(ロイター日本語ニュース 森佳子 編集 橋本浩)



by oninomae | 2008-07-20 12:15 | 金融詐欺