“モンサント保護計画”: ヨーロッパでのモンサントGMOごまかし作戦 F. William Engdahl
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/gmo-bdda.html より
“モンサント保護計画”: ヨーロッパでのモンサントGMOごまかし作戦 F. William Engdahl Global Research 2013年6月4日
5月31日、世界中のマスコミに、このロイターのものと良く似た見出しが載った。“モンサント、ヨーロッパでは、GMO作物推進から撤退。”この記事の出典はモンサント・ジャーマニーの公式広報担当とのインタビュー抜粋を掲載したドイツの左派系日刊紙TAZだとされている。
ウルスラ・リュトマー・ウザンヌが、“現時点では、これは広範な支持を得られていないという結論に至りました。”とTazに語ったと報じられている。
彼女の発言は全世界に流され、ロイターはモンサント社の広報担当者トーマス・ヘルシャーにインタビューし、彼はこういったと報じた。
“我々は農民達の広範な支持と、広範な政治的支持があり、規制制度がしっかり機能している場合にのみ、GM種子を販売するつもりです。現在これに該当するのは、ヨーロッパの少数の国々、主としてスペインとポルトガルだと我々は確信しています。” [1]
世界がシャンペンを開けて、GMOと、それと組み合わせて使うラウンドアップ等の除草剤の終焉を慶賀する前に、公式に語られていることはより詳しく調べる価値がある。
モンサント自身が言っていること
モンサント・ジャーマニーの公式ウェブサイトを見みてみると、マスコミ記事に関す同社の公式の報道発表がある。
“Aktuell uberschlagen sich die Medien mit der Nachricht、dass Monsanto die Vermarktung von gentechnisch verbessertem Saatgut in Deutschland und Europa eingestellt haben soll。
Das stimmt so nicht。Monsant bietet schon seit einigen Jahren nur dort gentechnisch verbesserte Sorten an、wo ein funktionierendes Zulassungssystem und breite Unterstutzung auf landwirtschaftlicher und politischer Ebene fur die Technologie vorhanden ist。Aber grundsatzlich ist es richtig、dass Monsant sich in Deutschland und Europa auf die Zuchtung und Verkauf von konventionellem Saatgut und Pflanzenschutzmitteln konzentriert.” [2]
重要な部分を翻訳すると、こういう内容だ。
“現在、マスコミにはモンサントがドイツとEUでGMO種子マーケティングを中止したという報道であふれています。これは正しくありません…”
またセント・ルイスの親会社モンサント・ウェブ・サイトには下記声明がある。
“ヨーロッパ農民の弊社顧客への高品質の通常のトウモロコシ、菜種や野菜の種子販売の事業は好調です。ヨーロッパの皆様には、ここ数年、弊社は広範な農民の支持、広範な政治的支持and良く機能する規制制度を享受できる場所でのみバイオテク種子を販売するとお話しております。こうした条件があてはまるのは、現在、ヨーロッパのわずかな国々、主としてスペインとポルトガルです。弊社CEOヒュー・グラントが、2009年にフィナンシャル・タイムズにお話した通り‘ヨーロッパは、しかるべき時に、しかるべき決断をされるでしょう。’現在ヨーロッパで栽培されている唯一のGM作物は、作物に大きな被害を及ぼしかねない昆虫のアワノメイガに耐性があるトウモロコシです。その栽培量はヨーロッパで栽培されている全てのトウモロコシの1%以下(ヘクタール数)です。” [3]
いずれの声明も慎重な検討に値する。
第一に、ドイツ語の声明は英語版といささか異なる。ドイツ語声明は、モンサントがEUでのGMO種子のマーケティングを停止したというマスコミ報道は偽りだとして、公式に否定している。
第二に、同社は通常の種子の育種と植物保護化学薬品の販売に注力するという彼らの声明は、モンサントのEU販売の現状の説明でしかなく、それ以上の何ものでもない。EUでのモンサントGMO種子の販売は限定されているので、モンサントの事業が、現在稼いでいるものに注力するのは当然だ。
ところがモンサントが“植物保護化学物質”と称しているのは、主に同社のラウンドアップ除草剤、つまり、農民とのライセンス契約によって、全てのモンサントGMO種子と必ずペアで販売されている、ヨーロッパと世界で、売り上げナンバーワンの除草剤でもあるものだ。それが、ヒトの胚細胞にすら極めて有害なことも分かっている。
アメリカの声明には興味深い重要な違いがある。第一に、EUでGMO種子を拡販することについてのモンサントの政策のいかなる変化も全くない。同社は、いずれもEUの国、スペインとポルトガルで、GMO種子の拡販を継続すると、明確に述べている。また声明はハリウッド俳優と混同されぬよう願いたいが、ヒュー・グラント会長の、同社は、EUがGMOを認める方向に変わってくれるのを期待しているという発言を引用している。更にEUにおける同社GMOトウモロコシの現在の状況を述べている。それ以上何もない。EUでGMOを中止するという声明はどこにもない。
疑わしいタイミング…
モンサントの公式声明を調べる時間がなく、ロイターやTAZの見出しを見るだけの、世界中の大半の人には、モンサントは、EUでのGMO種子普及の取り組みをあきらめたというメッセージが流されてしまったわけだ。TAZインタビューのタイミングが、入念に仕組まれたモンサントの欺瞞PR作戦らしきものの正体を示唆している。ジョスト・モーリンによるTAZの元記事は、世界の約52ヶ国の400以上の都市で行なわれた、世界的な反モンサント抗議デモ、反モンサント行進から一週間もたたない5月31日に掲載された。[4] TAZ記事は、世界中のマスコミに、感情的で、事実的にも誤解されやすい見出しで、参考記事として利用された: Sieg fur Anti-Gentech-Bewegung: Monsanto gibt Europa auf (反GMO運動の勝利: モンサント、ヨーロッパをあきらめる)。
反モンサント行進はいくつか重要な点で注目に値する。モンサントやGMOカルテルにとって最も気がかりだったのは、グリーンピースやBUNDやフレンズ・オブ・ジ・アースの様な反GMO NGOが組織したものではない抗議デモ行動として初めてのものだったという事実だ。本文の筆者が一つのイベントに演者として参加したドイツでは、関心を持つ活動家達がフェースブックを使って組織した。一方、GMOに公式に反対するNGOは、スポンサーとして参加しておらず、積極的に組織活動していた様子もない。
この行進は、モンサントやお仲間にとって、恐るべき新たな分子の登場、アフリカ、中国、インド、中南米や、もちろん東欧と西欧でのGMOの普及をより一層困難にしかねない、危険な草の根の反GMO抗議行動の広がりだった。とりわけ、あからさまにモンサントGMOに反対している左派新聞TAZとのよく練り上げられたインタビューのタイミングが、“認知支配”と、EUや外国で増大しつつある反GMO感情という逆風を凌ぐために仕組まれたことを示唆している。広範な大衆が退却を額面通りに受け止めたので、差し当たり、モンサントは、プロパガンダ上、戦術的な勝利を勝ち取った。ある老練なモンサントGMO反対論者が表現したように、今回の記事には“消費者/活動家のエネルギーや勢いを作り上げるには長い時間がかかるのに対し、PR会社のキャンペーンは、ごく短期間で立ち上げることができるのが、それが有効な理由の一つだが、激しい論争の的になる多くの悪行に適用されてきた、バーソン & マステラーズの戦術のよう”巧妙なPRキャンペーンと見なせるあらゆる特徴がある。
約200匹のラットを二年間にわたった独立研究が、GMOトウモロコシとモンサントのラウンドアップ除草剤を与えられたラットは、非GMO飼料を与えられたラットと比べ、劇的に多いがん腫瘍、より高い死亡率や、臓器損傷を示すことを明らかに証明したにもかかわらず、モンサントは、既にEUで商用化されているGMOトウモロコシのリコールを行なっていない。[5]
しかも、モンサントは、通常の種子にしか触れていないが、種子を東ヨーロッパ市場に押し込んでいることはあからさまに認めている。モンサントの国際業務問題担当副社長、ヘスス・マドラソは、同社はウクライナの通常トウモロコシの市場で市場占有率を高めることに注力しており、東ヨーロッパと南米は現在同社の主要な成長部門であると述べている。
一方アメリカでは、モンサントの地元ミズーリ州出身共和党議員で、モンサント選挙資金の主要受取人の一人で、明らかに同社おかかえのアメリカ上院議員ロイ・ブラントに、モンサントが直接協力して、同社の作物や化学薬品が引き起こしたいかなる損害からもモンサントが訴えられないようにする、あいまいな不意打ち策を包括予算割当法案に忍び込ませるようにさせたことが漏えいした。[6]
反対する人々からモンサント保護法と呼ばれている法律、よもやモンサント保護法が、自分たちが投票する包括予算割当法案の一環であることに、多数の議員が気付いていなかったのは明白だ。何十万もの抗議の請願にもかかわらず、本質的に、たとえ将来の研究で、GMO種子が、癌なり何なり重大な健康問題を引き起こすことが分かっても、モンサントや他のGMO業者達に法的免責を認めるモンサント法案が、オバマ大統領の署名によって発効した。連邦裁判所はもはや、GMO種子の展開、使用、販売を止める権限を持っていない。[7] アメリカで、そのようなとんでもない法的免責を享受する他の企業といえば、ワクチン製薬会社だけだ。
TAZが報じ、主流マスコミが無批判に全世界で広げた巧妙な歪曲とは、全く違う構図が存在しているのだ。モンサントはあからさまに認めているように、EUでの同社のGMO製品や除草剤のマーケティングは中止していない。EU GMO品質表示法を免れることができている国では、同社のGMO大豆とGMOトウモロコシのEUへの輸入を停止していない。
モンサントは、東ヨーロッパで市場占有率を高めることに注力するとも述べているが、それは、規制がより“緩やか”なことが多く、腐敗で悪名高いウクライナのことだ。同社は、そこでGMOを推進していることも否定していない。同社は、むしろ積極的に通常の種子のみに焦点をあてると述べている。要するに、モンサントの背後にある、世界で最も重要な種子を支配する地政学的、経済的利害は、余りに大きすぎるため、同社も、そう易々と降伏の白旗を掲げるわけには行かないのだ。
モンサント社の実績
このモンサントPR欺瞞キャンペーンには似たような実績がある。1999年、GURTS(遺伝子利用制限技術)として、また一般的にはターミネーター技術として知られている根本的に新しいGMO技術に対するデルタ社の特許を入手する為、モンサントが、ミシシッピ企業デルタ & パイン・ランドの株式公開買付け公式をするという事実を巡って、何カ月か世界的な反モンサント抗議行動が高まった後。デルタ社は、アメリカ農務省とともに、ターミネーターの特許を取得していた。この技術は、GMO種子、あるいは植物に、たった一度の収穫後に、“自殺する”ことを強いて、農民が、価格や入手のしやすさとは無関係に、毎年、モンサントに、新しい種子を買いに来るようにさせるのだ。
ターミネーターのイメージが脅かされて、始まったばかりのGMOプロジェクトを丸ごと、初期の段階で頓挫させかねなくなった為、ロックフェラー大学理事長で、GMOの資金提供者、ロックフェラー財団理事長ゴードン・コンウェイが、モンサントを急遽訪問し、取締役達に会って、全世界での極めて脆弱なGMOキャンペーンへのダメージを限定すべく、実質上の戦術的撤退をするよう説得した。後に欺瞞であったことがわかったのだが、モンサントは、ターミネーター技術の“商用化”を推進することはしないと発表し、特許権者デルタ & パイン・ランド社の株式公開買付けを中止した。反GMOのNGOは大勝利を主張し、7年間何の音沙汰もなかったが、2006年にモンサントが、ターミネーター特許の共同所有者デルタ & パイン・ランドを買収すると極めて質素に発表した。今度は、反GMOロビーもうんともすんとも言わなかった。反GMO派は勢いを失い、買収は進められてしまった。[8]
現在の健康に良い非GMO農業勢力も、1999年当時のようにだまされやすいものであることになるのかどうか、現時点ではまだ分からない。
注記
[1] Reuters, Monsanto backing away from GMO crops in Europe, May 31, 2013, accessed in http://in.reuters.com/article/2013/05/31/monsanto-europe-idINL2N0EC1B720130531
[2] Monsanto Germany Press Release, Stellungnahme zur Vermarktung von gentechnisch verbessertem Saatgut in Europa, May 31, 2013, accessed in http://www.monsanto.com/global/de/news-standpunkte/Pages/vermarktung-von-gentechnisch-verbessertem-saatgut-in-europa.aspx
[3] Monsanto, Monsanto Position on GM Cultivation in Europe, accessed in http://monsantoblog.com/2013/05/31/monsanto-position-on-gm-cultivation-in-europe/
[4] Jost Maurin, Sieg fur Anti-Gentech-Bewegung: Monsanto gibt Europa auf, TAZ, 31.05.2013, accessed in http://www.taz.de/Sieg-fuer-Anti-Gentech-Bewegung/!117205/
[5]F. William Engdahl, Saat der Zerstorung, 2013 Neue Auflage, Kopp Verlag.
[6] RT, Obama signs ‘Monsanto Protection Act’ written by Monsanto-sponsored senator, RT.com, March 28, 2013, accessed in http://rt.com/usa/monsanto-bill-blunt-agriculture-006/
[7] 同上。
[8] F. William Engdahl, Monsanto Buys ‘Terminator’ Seeds Company, Global Research, August 27, 2006, accessed in http://www.globalresearch.ca/monsanto-buys-terminator-seeds-company/3082
記事原文
“The Monsanto Protection Plan”: Monsanto’s Deception Game on GMO in Europe
http://www.globalresearch.ca/the-monsanto-protection-plan-monsantos-deception-game-on-gmo-in-europe/5337502
おまけ追記
米 日本のTPP交渉参加に70余の意見 6月11日 6時12分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130611/t10015210511000.html
TPP=環太平洋パートナーシップ協定への日本の交渉参加をにらんで、アメリカ通商代表部がアメリカ国内の産業界などの意見を募ったところ、農業団体からの日本の市場開放への強い期待など、これまでに70余りの意見が寄せられました。
アメリカ通商代表部は、日本がTPPの交渉に来月下旬から加わる見通しなのを踏まえ、今月9日までのおよそ1か月の間、日本の参加についての意見を産業界などから募るパブリックコメントの手続きを実施し、これまでに70余りの意見が寄せられました。
このうち、農業団体などからは、日本がTPPに参加すれば関税の撤廃などで日本の市場開放につながるとして強い期待が寄せられたほか、食品添加物に関する規制をほかの参加国と揃えるよう要望する意見が出されました。
一方、自動車産業の労働組合や製造業の団体からは、輸出を有利にする意図的な円安誘導への懸念などが示され、TPPの交渉で為替操作に歯止めをかける条項を盛り込むよう求める意見も相次ぎました。
また、日本の保険市場について、かんぽ生命の存在が大きく、公平な競争ができないといった意見もありました。
アメリカ通商代表部はこれらの意見に加え、来月はじめに公聴会を開いて業界団体の懸念や要望を確認したうえで、TPPの交渉と並行して行われる自動車や非関税措置を巡る日米2国間の協議に臨みます。
「TPPに反対したら左翼」-安倍晋三の本性がポロリ Tue.2013.06.11
http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-2154.html
by oninomae | 2013-06-10 23:58 | バイオハザード・GMO食品