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ハイチのコレラ禍 藤永 茂

ハイチのコレラ禍(1)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2011/09/post_3029.html

2010年10月18日、大震災後のハイチの困窮民医療事業のためにキューバから派遣されていた医師団がコレラ患者の大量発生に気が付きました。それから一年弱の間に、感染患者40万、死者は6千人を超えています。フランスのエクス−マルセーユ大学教授ルノー・ピアルー(Renaud Piarroux) によると、2011年9月の時点でも、月間1万人のコレラ患者が発生し、毎日死人が続出しています。ピアルー博士は、2010年11月コレラ発生のすぐ後、ハイチ政府の要請でハイチにやって来て現地人の伝染病専門医の協力のもとにコレラの発生と伝染状況についての調査を開始して、その発生源がMINUSTAH(United Nation Stabilization Mission in Haiti, 国連ハイチ安定化ミッション) に参加しているネパールからの要員たちであることを突き止めました。

ハイチの現状を考えるためには、2004年春からハイチに駐留しているこのMINUSTAH という治安維持軍の性格を理解する必要があります。

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ハイチの一般大衆は国連ハイチ占領軍と呼んでいるようですが、まさに本質を衝いています。

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現在約1万1千人の武装要員と約2千人の非武装要員からなっています。以前このブログで説明したことがありますが、ごく大まかに言えば、1804年、世界最初の黒人共和国として独立したハイチは、この約100年間、実質的にはアメリカの武力的政治的支配下にあります。MINUSTAHの駐留はアメリカによる占領の現在の形態です。この黒人共和国は、普通の意味での社会的治安が元々悪い国ではありません。殺人犯罪の統計で言えば、現在でもアメリカ本国の方がハイチより5倍も多いのです。

MINUSTAHの駐留(占領)はアメリカの言いなりになる傀儡政権を通してハイチの支配を維持するのがその役割です。この占領軍の睨みがなければ、2010年11月から2011年3月にかけて強行された完全なインチキ大統領選挙で、ハイチの一般大衆が圧倒的に支持する最大政党を除外するという暴挙は決して押し通すことは出来なかったでしょう

そのMINUSTAHがコレラをハイチに持ち込んだというので、「MINUSTAHは出て行け」と叫ぶ民衆のデモが頻発するようになったのは当然です。ところが、国連当局は言を左右にしてなかなか責任を取ろうとはしませんでした。その一つの理由はネパール政府の抵抗であったとされています。MINUSTAHは,勿論、UNからの出費で賄われています。その人員を提供した国は一人当たり月約一千米ドルの報償が得られ、MINUSTAH要員の30%以上を派遣担当しているネパールにとってその収入は失うことの出来ない金額であるようです。

ピアルー博士のチームは早くからコレラの発生源が国連軍にあることがほぼ確実であると判断して国連自体による早急な調査と対応を要請していたのですが、コレラの世界的権威であるをハーバード大学医学部のJohn Mekalanos教授を含むと考えられる国連自体の調査の反応は遅く、発生から約10ヶ月後の2011年9月になってやっとMINUSTAHのネパール要員がハイチに持ち込んだことを認めたようです。

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ピアルー博士のチームの他にも二つの独立グループが発生から数週間で確信するに到った発生源の特定にハーバード系の最高権威者たちがこんなにも長く手間取った理由は追求に値しますが、すべてが政治と金に支配されている世界、特にアメリカでは理由解明は始めからほぼ絶望でしょう。

日本版もあるScience Watch というウェブサイトで極めて興味深いインタビュー記事を読むことが出来ました。時は2011年2月、話題の中心はハイチのコレラ騒ぎ、John Mekalanos という学者がどんな人物であるかが読み取れます。長いインタビュー記事の最後の部分だけ下に引用。:

■ The estimate is that there might be 200,000 doses of the vaccine in existence. So the idea of immunizing Haiti seems out of the question for now. But why was it out of the question before Haiti happened? Why wasn't it stockpiled? You'll never stockpile this vaccine without a few global health organizations saying it makes sense to do so. And the obvious organization, the one which stands right in the cross hairs, is the WHO. It takes courage to make that statement and stand by it.
By way of full disclosure, I have been involved in developing cholera vaccines so you might say I'm conflicted. However, others have made cholera vaccines too. The problem has not been as much making a safe and effective vaccine. It is getting agencies to say they are willing to use it as part of public policy. After that I'm sure we can figure out how to get that global stockpile made.
But without WHO saying we need it, we want it, if it gets made we will use it, then it will be pretty hard to get somebody to write the check to pay for the program's success. They're the experts the world looks to, yes—but they're making a lot of mistakes in my opinion in setting policies that are basically anti-vaccine when addressing the cholera threat. Let's clean up the water too, but pro-vaccination policy is not anti-water sanitation policy. They are compatible and should be both embraced.

見積もりとしては、現在、20万人分ほどの(コレラの)ワクチンがあるのじゃないかな。だから(人口一千万の)ハイチをワクチン免疫するという考えは、今のところ、問題外です。しかし、それは一大震災の前になぜ問題にならなかったのか? なぜコレラワクチンが備蓄されなかったのか? このワクチンはいくつかの世界の保健機関が有意義だと言わないかぎり、決して備蓄されることはないでしょう。そして問題の焦点に位置するのは,誰が見たって、WHO(世界保健機関)です。ワクチン備蓄の必要ありと言明してその立場を貫くのは勇気を要します。

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何も隠す気はないから言いますが、私はこれまでコレラワクチンの開発にたずさわって来ましたから、お前には公私利害の衝突があると言う人があるかもしれないが、コレラワクチンを作って来た人間は他にもいます。問題は、安全で良く効くワクチンを作るかどうかよりも、政府機関に、公共政策の一環としてワクチンを使用しようと言わせることにあるのです。そうなれば、グローバルな備蓄を達成する方法を考え出すことは必ずると出来ると、私は考えます。

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しかし、WHO が、ワクチンは必要だし、ぜひ欲しいし、製造されたら使用すると言ってくれなければ,免疫プログラムの成功のために誰かに出費させることは極めてむつかしいでしょう。WHO の人々は世界中が頼りにしているエキスパートだが、コレラの脅威に立ち向かうのに、基本的に反ワクチンの政策を採用することで大変な誤りを犯しつつあると、私は考えます。もちろん、水もクリーンにすべきだが、ワクチン免疫政策をるのは、上下水道衛生政策に反対することではありません。二つの政策は両立するもので、両方とも採用すべきなのです。」■

これは何とはなしに胡散臭い語り口、英語で言えば, It smells とか Something’s fishy といったところでしょうか。Mekalanos 教授の説明するワクチン開発製造とWHO との関係を聞いていると、2010年から2011年にかけての新型インフルエンザと「タミフル」や「ワクチン」をめぐる大騒ぎを思い出しませんか?


最後の所でワクチン免疫政策と上下水道衛生政策は互いに排除する関係にあるのではなく、両方とも採用すべしという意見は確かに「正論」(「」は引用者)です。しかし、物の判断は目の前の現実をよく見て下さなければなりません。Mekalanos教授自らが認めるように、今入手できそうなコレラワクチンの量は絶対的に不足しているのですから、免疫政策は、全く問題にならないとすれば、毎日コレラで数人が死亡している現実を前にしての唯一喫緊の対策は、コレラ菌による汚染をハイチ国民の、とりわけ、いまだに少なくとも二十万を数える震災難民のキャンプや貧困地域の生活水から出来るだけ排除することでなければなりません。ところが、この上下水道衛生政策には、実質的に植民地宗主国であるアメリカ(とその手先と化した国連と多くの大型NGOs)は全く熱心ではないのです。私はここでもアメリカというシステムの本質的な残忍さを再確認せざるを得ません。アメリカは国外にしろ、国内にしろ、名も無い人間たちの命を大切にする気など全くありませんハイチについてこの事を激しく告発し続けている二人のハイチ女性がいます。そうした話はまた次回で致します。

藤永 茂 (2011年9月28日);



ハイチのコレラ禍(2)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2011/10/post_cdbe.html

John Mekalanos教授の名前に出会ったのは、イジリ・ダント(Ezili Danto, 通常の名前は Marguerite Laurent) という異色のハイチ女性の書いたものの中です。この人物については以前にも書いたことがあります。今、アメリカ国内にあって、ハイチ人たちのために最も力強く発言しているのはこの女性でしょう。イジリ・ダントというのは、もともとはハイチ土着宗教の闘う女神の名です。独り身でありながら数人の愛する娘があり、娘たちのために勇敢熾烈に闘う女神だそうです。

マルゲリト・ローランはコネティカット大学法学部で法学博士の学位を取得し、Haitian Lawyers Leadership Network ("HLLN") という組織の議長を勤め、人権擁護弁護士として活躍しているのですが、その一方、ステージ・ダンサー,詩人、著作家としても知られているようです。大層な美形でもあります。詳しくは次のサイトを訪れてみて下さい。:
http://www.margueritelaurent.com/
ハイチのコレラ禍についての彼女の発言は
http://www.ezilidanto.com/zili/2011/05/un-brought-deadly-cholera-disease-to-haiti-blames-victims/
にあります。

国連当局の反応の遅さ、特にハイチの上下水道衛生向上の熱意の欠除が厳しく批判されています。クリーンな水を供給するための水道パイプには全く出費がない一方、コレラによる死骸を収容するために、20万個もの死体バッグが購入されメカラノス博士や、例の“ハイチ貧民の救いの神”ポール・ファーマー博士などは、現実には医師として実施不可能と知りながら、一般論としてワクチン免疫の必要性を説いていることを、彼女は言葉厳しく糾弾しています。

世界中から集まった大震災救助義援金の九割以上が米国の私企業やの大型NGOsの懐に転がり込むということのようです。20万個の死体バッグ購入もその典型的な一例でしょう。

John Mekalanos 教授が製薬会社や軍部とどのような関係にあるかは、インターネットで調べれば直ぐに分かります。私にそのチェックをやる気にさせたのは、もう一人のハイチ人女性 Dady Chery です。彼女の拠点の一つは Axis of Logic という反マスメディアの姿勢を明確に取る報道サイトで、その常連コメンテーターとして名を連ねています。彼女はこのサイトにフランスのエクス−マルセーユ大学教授ルノー・ピアルー(Renaud Piarroux) の長いインタビュー記事を発表し、私はそれを読んで前回のブログを書いたのでした。このサイトでは極めて興味ある投稿記事や世界ニュースを読むことが出来ます。近い将来にその幾つかを報告するつもりです。

John Mekalanos 教授 はハーバード大学のコレラワクチン開発の指導者的立場にあると思われますが、幾つかのバイオテクノロジー会社の創始者でもあり、特にPharmAthene という会社は生物(細菌)兵器に関する事業を専門としていて、当然ながら米国政府、特に軍部との関係は密接だと考えれらます。

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そのため、ハイチの一部では、今回の大規模のコレラ禍を対細菌兵器防衛の予行演習としてJohn Mekalanos 教授たちが利用しようとしたのではないか、という疑惑まで語られるようになっています。私個人としてはそのような無残なことは信じたくありませんが、前回のブログで紹介したScience Watch によるJohn Mekalanos 教授のインタビューでの彼のnonchalant な語り口には確かに一種の不気味さが漂っています。自国の黒人兵士たちを性病対策の生体実験に使った過去が実証された米国軍部のことですから、ありえないことではありません。とにかくアメリカという国は開国以来一貫して恐るべき残忍性を発揮し続けて今日に到っています。内的にも外的にも実に残忍な国であります。

藤永 茂 (2011年10月5日)


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by oninomae | 2011-10-07 19:52 | 歴史・歴史詐欺捏造  

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