情報支配 櫻井春彦
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九州電力が原発推進のために仕組んだ「やらせメール」、資源エネルギー庁による「不適切・不正確な情報への対応」を目的とした新聞やインターネットの監視が話題になっている。
東京新聞によると、メディア情報を監視するために外部委託した費用の総額は本年度分を含め、4年間で約1億3000万円に上るという。
中には「こんなことは昔から知っていた」と言う人もいるが、証拠が出てきた意味は大きい。証拠を握っていてもマスコミが報道しなかったということもあるかもしれないが、外部に情報が出てきた以上、問題にするのは当然である。
ところで、政府や大企業は情報を操作するだけでなく、収集、集積、分析によって一般市民を監視する仕組み、つまり情報を支配するためのシステムを築き上げてきた。
ジョージ・オーウェルの小説『1984』に出てくるビッグ・ブラザーのような存在だ。
原子力だけがターゲットになってきたわけではない。
勿論、こうした監視システムは日本だけの問題ではない。世界的に見ると1970年代から問題になりはじめ、1990年代から欧米では大騒動だった。
この時期、日本のマスコミもこうした状況を知っていたはずだが、この問題に触れようとしなかった。しばらくしてから一部のメディアが取り上げていたが、大半は本筋から外れていた。
この問題に切り込んだ最初のジャーナリストはダンカン・キャンベル[Duncan Campbell]。1976年5月号のタイム・アウト誌に「盗聴者」という彼の記事が載っている。マーク・ホーゼンボール[Mark Hosenball]との共著だが、執筆の中心はキャンベルだ。この年の11月、ホーゼンボールはイギリスからの退去が命じられている。
1977年にキャンベルはGCHQ(イギリスの電子情報機関[Government Communications Headquarters])の極秘事項を明るみに出したとして逮捕された。
情報源だったクリスパン・オーブレイとジョン・ベリーも拘束されている。
裁判の結果、ベリーは有罪になって懲役6カ月、執行猶予2年、弁護費用250ポンドの支払いが命じられ、キャンベルとオーブレイは無罪になったのだが、無罪になったふたりには起訴費用として、それぞれ2500ポンドを支払えと命じている。要するに、犯罪は成立しないが罰するという姿勢をイギリスの裁判所は示したわけである。
地球規模の通信傍受システム、ECHELONの存在を最初に指摘したのもキャンベルである。1988年8月のことだ。このシステムはキーワードやアドレスなどをチェックし、コンピュータが自動的に会話内容を記録、分類するとされている。
別に「企業スパイ」のためのシステムではない。インテルサットなど衛星を利用した通信のほか、無線や地上のマイクロ波ネットワークを傍受、スパイ衛星もシステムに組み込まれているようだ。
このシステムの動かしているのはUKUSA。UKとはイギリスのGCHQ、またUSAとはアメリカのNSAを指し、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン系国の情報機関も参加している。
カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの政府はこのネットワークに関与できず、この3カ国を米英両国政府が支配する仕組みとして機能している。形式上、日本もUKUSAに加わっているのだが、アングロサクソン系の国々とは立場が全く違う。
1970年代には情報の収集と分析を行うシステムの開発も進んだ。中でも有名なシステムがPROMIS[Prosecutor's Management Information System]。INSLAW社が開発した当初は容疑者を追跡することを目的としていたのだが、 不特定多数の個人情報をコンピュータ網を利用して集め、分析するために使われるようになる。カネやプルトニウムの動きを追跡するためにも利用されているようだ。
注目を集めた(日本は違うが)大きな理由は、司法省の横領疑惑が持ち上がったからである。INSLAW社は司法省と協力してシステムを開発していたのだが、ロナルド・レーガン政権になると司法省がPROMISを取り上げてしまったのである。その手口が違法だと会社に訴えられ、1989年には破産裁判所が会社側の主張を認め、司法省はペテン的、欺瞞的、詐欺的な手段でPROMISを横領、さらに不正な手段でINSLAWを清算しようとしたと認めたのである。1989年にはワシントンの連邦地裁でも同じ内容の判決を言い渡され(上級審で破棄されたが)、1992年には下院司法委員会も両裁判所と同じ趣旨の報告書を出している。司法省が横領した・・・大変なことだが、日本で報道されたという話は寡聞にして聞かない。
実は日本の法務省もPROMISに注目、法務総合研究所は1979年3月と1980年3月、2度にわたってPROMISに関する概説資料と研究報告の翻訳を『研究部資料』として公表している。
この当時、アメリカの日本大使館に一等書記官として勤務していたのが後の検事総長、原田明夫。
実際にINSLAW社と接触していたのは後の名古屋高検検事長、敷田稔である。
(引用注:あのねー、だったら、人工地震インサイダー取引犯を捕まえたらどうなんですか?)
原田は法務省刑事局長時代、『組織的犯罪対策法(盗聴法)』を推進している。(詳細は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を)
なお、盗聴法は1999年に成立している。「住民基本台帳ネットワーク」も同じ流れの出来事だ。
こうした情報支配の問題を日本のマスコミは取り上げようとしなかった。世間では「左翼」と見られている記者や編集者も触れたがらなかった。個人的な話になるが、この問題を取り上げてくれたのは月刊の軍事研究である。
by oninomae | 2011-07-25 23:17 | NWO・番号付動物農場・警察国家