国民が背負ったベクレル 武田邦彦
原発事故中間まとめ(5) 国民が背負ったベクレル
福島原発から上空に漏れた放射性チリは、約70京ベクレル。海に流れた方はハッキリしないが10京ベクレル程度と考えられる.
つまり、福島原発から環境へ漏れた量はおおよそ100京ベクレルだった。この量を少し落ち着いて考えてみよう。
福島第一原発には1号機から4号機まであった。1号機、2号機、3号機は運転中だったので、原子炉の中に合計6亥4000京ベクレル(亥は本当は土偏で、ガイと呼ぶ)、プールに1400京ベクレルの放射線量があり、4号機は原子炉の点検中で、原子炉の中はゼロ、プールが2100京ベクレルだった。
つまり、原子炉に6亥4000京、プールに3500京だから、合計6亥7500京ベクレルの放射線量があった。
この内、100京が漏れたのだから、全体の0.15%が漏れたに過ぎない.もっとも、放射線量は運転が止まる(核分裂が止まる)と急激に少なくなるので、どこの時点をとるかで大きくことなる。
とにかく、ザッと言うと、福島原発が持っていた放射線量の1%未満が大気中にでたことになる。
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まず100京ベクレルというのは、余りにとてつもない量なので、ピンと来ない。まずは、これを「日本国民あたり」にしてみると、100京を1億2000万人で割るので、
「約80億ベクレル」
となる。
つまり国民一人あたり80億ベクレルというとてつもない量を、私たちはかぶり、これからの子供はそれを背負って生きていくことになる.
すまない!
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気を取り直して、少し考えてみよう.
私たちは水道水を1日、0.6リットル飲むが、料理や歯磨きなどを合わせると2リットルになる。
水道水の汚染の基準はWHO(世界保健機構)が、1リットル1ベクレルと決めているので、おおよそ1日1ベクレルということだ。
そうすると80億ベクレルというのは、80億日分になる。
人生80年とすると、人の一生は約3万日だから、その30万倍というとてつもない数字になる.
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原発の事故がいつもこんな大変なことになるという訳ではない。たとえば、新潟沖地震で壊れた柏崎原発では、3億ベクレルが漏れた。
ずいぶん多いようだけれど、3億ベクレルを1億人で割ると、
「一人3ベクレル」
になる.
放射性チリが水道に入っても、3日間、我慢したらそれで終わりになる.今度の福島原発のすごさが判ると思う.
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さて、このことが判ると、「福島原発から出た放射性チリをいくら薄めても、将来の子供達が被曝する」ということがわかる。
たとえば、福島の瓦礫を日本中に移動したり、ホウレンソウを基準以下だと言って生協が運搬したり、乳牛を北海道に移動すると、
「人間の手で放射性チリを全国にばらまく」
ことになり、しかも日本人一人あたりの量がとんでもなく多いので、永久に日本列島が汚れてしまう。
さらに、秋になって台風が来て強い風が吹くと、放射性チリの多いところから、また全国にばらまかれる。
量が少ないときはこんな問題は起こらないが、多いときはかくのごとく違うのだ。
そこで、本来なら政府が、このことを国民に知らせて、ハッキリとした対策をとるべきであった。
1) 放射性チリは100京ベクレルほど出てしまった、
2) これは国民一人あたり80億ベクレルにもなる、
3) 薄めても危険な状態になり、日本列島が全部、汚染される、
4) だから、福島のものを他県に絶対に出してはいけない、
5) 東京など周辺の地域もできるだけ早くチリを集めなければならない、
6) 国家が福島を除染して、原発近くにチリや土壌を移動し、そこで処理を急がなければならない、
7) 半減期が30年ということを考えると、早くやらないと100年、禍根を残す、
ということなのだ。
「梅雨までに」と言ってきたが、すでに梅雨に入った.かくなる上は強い風の吹く台風までに除染しないと、南風で宮城が、北風で静岡が、東の風で新潟や秋田まで汚染が拡がる.
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日本人一人あたり80億ベクレルをできるだけ小さくすること、それが今の大人が次世代の子供達にしてあげなければならない最大の義務だろう.
放射性チリで汚れた日本列島では「環境を良くする」などと言うことは全く出来ないからだ。
一刻も早く、事実を直視して、目を覚ましてもらいたいのだが。
(平成23年6月12日 午後3時 執筆) 武田邦彦
校長先生が児童を被曝させたい理由
http://takedanet.com/2011/06/post_d5dd.html
浦安市の校長先生は児童を被曝させるために、
1) 給食は全児童が食べなければならない、
2) 給食に放射性物質を含むものを使う、
と宣言しています.
校長先生は給食に関して義務と権限を持っていますので、このようなことを意図的にされるのは、児童を被曝させたい(結果として被曝量を増やすことを知っているから)と希望していることは明らかです.
常識ではまったく考えられませんが、校長先生には校長先生の「理屈」があるようです。ある校長先生が次のような「便り」を出しておられます.図はすべてダブルクリックすると大きくなります。


まず、第一に「学校給食法」によって、校長先生は学校給食が円滑に行われるように努力する必要があり、給食はその学校の児童全員に行わなければならないということが「法律」で定まっていることを示しています.
まず、校長先生の頭には「自分が守らなければならない法律」が強く入っているのでしょう.
そして、おそらくは「たとえ児童の健康に障害が起こっても、それより法律を守ることが大切だ」と信じておられることと思います.
つまり、学校給食法で書かれている「給食」の前提が「児童の健康に障害が起こる可能性に無いものに限る」ということであることに思いが至らないのです.
昔から日本にはこのようなタイプの校長先生がおられました。自分の学校の児童を、自分の子供のようには愛することができず、単に法律上の任務をすることによって出世を考えるタイプの方です.
そして、この校長先生が同じ「便り」にこのような文章を載せています.そこには、

「望ましい食生活の形成と人間関係の形成」 が給食の目的としているのです。
福島原発事故が起こって以来、東北、関東地区の「望ましい食生活」は「被曝量を増やさない」ということであることは異論が無いでしょう。
そのためには、学校給食に「放射性物質が入っていないもの」を徹底的に選ぶことが校長の役目であることは明らかです.
また、「望ましい人間関係」とは「イヤがる人に無理矢理、嫌いなものを食べさせる」ことでもなく、「思想的に被曝に恐怖を覚える人に無理矢理放射性物質が入っているものを食べさせること」でも無いはずです.もっと他人を思いやり、他人の心配を自分のこととして受け止めることが望ましい人間関係でしょう。
この校長先生が「法律好き」なら、次の放射線障害の防止に関する基本的な考え方を「法律」で示します.

もともと学校で児童が被曝するなど考えてもいませんので、ここでは対象が「労働者」になっていますが、もちろん児童ならなおさらです。
放射線防護の原則というのは、この条文でも判るように「放射線で被曝する量をできる限り少なくすること」なのです。
「基準以下だから安全だ」という防護原則などないのです。
ところで、野菜などの出荷基準というのは、
1) 対象者は児童ではない、
2) その食材だけが汚染されている場合であって、現在のようにさまざまな原因で被曝するときには、「足し算」が必要である、
ということで、このようなことは、およそ他人(児童)の「食」について責任を持たなければならない立場にある校長先生がよく勉強し、知り、そして行動をしなければならないのです.
つまり、校長先生が「給食を出す責任」があるなら、栄養士に「児童の年間総合被曝量」を「数値」でだす必要があるからです。
もちろん、児童の年間総合被曝量は、これもまた法律で決まっている値、
「一般公衆の被曝限度は1年1ミリシーベルトである」
以外にはありません.日本の文部大臣はもともと、内部被曝も食材からの被曝も計算していませんし、日本という一つの国の大臣が出した一時的な数字は児童の健康という点ではまったく関係のないことです。
教育の自由、独立性は日本国憲法の大きな精神の一つです.
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日本国憲法では、基本的人権が認められています.
それはたとえ子供(あるいは親権者)であっても、「自分が食べたくないものを食べさせられる」ことを拒否することはできます。日本国憲法は学校給食法の上位にあり、思想信条に背いた行為を強制させることは出来ないのです。
「福島原発事故からの被曝があるのだから、食事からこれ以上の被曝をさせたくない」
という考え(思想・信条)はまことにもっともであり、被曝に関するこのような考え方は長い間、日本社会で認められ、定着しています.
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ところで私はあまり法律論を展開する積もりはありません。法律以前に「愛情」や「倫理」があり、その方が人間として大切だからです.法律はいざと言う時のものです。
校長先生は、児童が空間から被曝を受けているときに、できるだけ被曝量を減らしてあげようと思わないのでしょうか?
学校給食法がどうであれ、被曝する子供達が可哀想と思わないのでしょうか?
たとえ、校長先生が「被曝は健康に良い」という奇妙な信条を持っていたとしても、それを児童に強制することはできるのでしょうか?
私は児童に対する愛情を忘れ、子供の健康を心配している親(たとえ一人でも)を「おまえは法律を知らないのだから黙っていろ」という校長先生は実に野蛮だと思います。
(平成23年6月12日 午後8時 執筆) 武田邦彦
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ワクチン同様、自滅コースは止めよう!!
by oninomae | 2011-06-13 07:16 | 放射能・ラジオハザード