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シャレード

今更ではありますが・・

Win-Winの賭け事? 2011/05/25
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2011/05/winwin_920d.html

ウイン・ウインという言葉は、「ランダムハウス」では、“形容詞:《米行政俗》(政策などが)どこからも非難されようのない、無難な、安全な;(交渉などで)双方とも満足のいく”と出ていますから、「どちらに転んでも勝ちになるような賭け事」という意味のつもりのタイトルは間違いでしょうが、このまま話を進めます。
 
オバマ大統領は5月19日に中東政策に関して四十数分間彼一流の名文句たっぷりの講演を行い、パレスチナとイスラエルの和平交渉について「(イスラエルが占領地を拡大した)1967年の第3次中東戦争以前の境界線に基づくべきだ」と述べて、イスラエルに占領地からの撤退を求める意志を表明しました。これはオバマ大統領がパレスチナ人側の苦衷に理解を示し、これまでの米国の対イスラエル政策を変更する英断であるとして、日本では高く評価されました。

20日、この“ビッグ”ニュースがテレビや新聞で大きく報道された時、私は直ちに賭けをしたのです。「オバマ大統領の講演で撤退が実現することは絶対にない」という賭けです。この予言が外れたら、私の負けですが、パレスチナ人たちの苦難が終る目処が立つだけでも大変喜ばしく、大きな祝祭に値します。そうなれば、私の予言の当り外れなど、どうでもよい事になります。

しかし、私が賭けに勝った場合にも,何か良いことがあり得るか? 一つの条件が満たされれば、それはあり得ると私は考えます。オバマ大統領の名演説に感動した人々が、今度のオバマ発言の字句内容をしっかりと記憶に刻み付けて、これから起ることの観察を続ける、というのがその条件です。では人々がしっかり眼を開いて観察を続ければ何が見えてくるか? それはオバマ大統領その人です。この人物が見えてない人々が多すぎます。このブログを時々覗いて下さる方々にも、ここで披瀝されているオバマ観が度を過ごして否定的で、バランスの取れた良識に欠けると考えておられる向きが多いようです。

世のアメリカ通のオバマ論評を信頼する限り、オバマは見えてきません。ではどうすれば真実が見えてくるか。それは自分自身で、動かない事実の数々をピックアップして、それを並べてみることです。今度のオバマ大統領の中東政策講演はその良い演習問題を提供しています。

5月19日、オバマ大統領は1967年の第3次中東戦争で占領した地域からの撤退をイスラエルに要求しました。これが出発点、第一の事実です。

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翌5月20日、オバマ大統領はホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ[Benjamin Netanyahu]首相と会談、ネタニヤフ首相は撤退の要求を即座に拒絶、これが第二の事実です。

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三番目の観測時点は5月22日にオバマ大統領がワシントンの甚大な影響力で知られるイスラエル系ロビー団体「AIPAC」の集会に出かけて行って行なった講演で、

Waiting for Obama at AIPAC 2011
http://www.youtube.com/watch?v=i_Id7hX_y7w&feature=player_embedded

http://www.youtube.com/watch?v=V3csqiA1J48&feature=player_embedded

その中でオバマ大統領は「パレスチナとイスラエルの和平交渉は1967年の第3次中東戦争以前の境界線に基づいて出発すべきだが、現在の現地の人口動態的現実に従って、交渉を通じて、お互いに合意の上で土地の交換をして、開戦前の国境とは異なる国境で合意すればよい」とAIPAC メンバーに告げました。くだいて言えば、「まあパレスチナ側と話し合ってイスラエルのお好きなように国境をお決めになったらいいのですよ」というメッセージに限りなく近いのです。“the new demographic realities on the ground”とか“with mutually agreed swaps”というオバマ大統領の言葉が、イスラエル側には全くスイートなものであり、パレスチナ側には如何に絶望的なものであるか、これは、AIPACでのオバマ大統領の発言内容をごく簡潔にしか伝えない短い新聞記事から読み取るのは至難の業ですが。

続いて5月24日、ネタニヤフ首相は米国国会に招かれて、占領地に建設したイスラエル人入植地からは絶対に撤退しないことなどを明言して議員たちの起立拍手喝采を浴びました。

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オバマ大統領はこれまで少なくとも新しい入植者住宅の建設は中止すべきだと言い続けてきたのですが、5月19日の講演の直前にも千数百戸の新しい入植者住宅の建設をイスラエル政府は認可しました。

この5日間の事態の展開を見て、オバマ大統領がネタニヤフ首相にすっかり嘗められていると取るか、展開の全構図がオバマ大統領も先刻ご承知の仕組まれたシャレードと考えるか。
 
上の5月19日,20日,22日、24日の四つの観測時点を結んで、イスラエルとパレスチナの和平交渉の将来をどう占いますか? ご自分でしっかり判断して下さい。私の判断は冒頭で既に申し上げました。もし目の前の事態に何らかのメリットがあるとすれば、まだオバマ大統領がよく見えていない人々が、自分自身の観察を通じて、今度こそバラク・オバマという政治家をはっきりと見据える絶好のチャンスを与えているということです。
 
このブログの2011年4月4日の記事で、アミリ・バラカ(旧姓リロイ・ジョーンズ)が遂にオバマ大統領を見限ったことを報告しました。彼は1934年の生まれで76歳、詩人、作家、ジャズなどの音楽評論家、それにラジカルな黒人思想家、運動家として、アメリカでは有名な人物です。これまでオバマ大統領を熱心に支持してきました。今またアメリカの言論界を賑わしているのは、同じくオバマ大統領の支持者として知られた高名な黒人思想家であるコーネル・ウェストもまた公然と反旗を翻したことです。ウェストはプリンストン大学教授、同じく同大学の黒人女性教授メリサ・ハリス−ペリー(Melissa Harris–Perry)が古くから進歩的雑誌と見なされてきた『Nation』に一文を投じて、ウェストの寝返りを言葉きびしく非難しました。これでオバマ大統領を見限るか支持するかで黒人エリート知識層はますます混乱し、いわば壊滅状態になりつつあります。皆さんのオバマ大統領の評価にもそろそろ再検討の必要が迫っているのではありますまいか?

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私自身は早くからオバマ氏を言葉巧みなコン・アーティストと見る立場を取ってきました。このブログの新しい読者のご参考までに、2009年11月11日付けの記事を以下に転載します。:

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オバマ大統領、医療保険制度、ホンジュラス、コロンビア
 ・・・・・・・・・・・・・・・。 体力が落ちて、まともな記事を書くことが出来ませんが、オバマ大統領が来日したときの日本人一般の歓迎ぶりを想像すると、吐き気が催してきます。彼が稀代の「コンフィデンス・マン」、コン・マンであるという、私の信念は揺らぐどころか、ますます強くなっています。_ そこで、アメリカ専門のしっかりした学者の方々に、是非、お願いしたいことがあります。最大の国内問題である医療保険制度は間もなく大統領が法案に署名することになりますが、これまでに至る経過を、選挙戦以前の時点から今日にわたって、詳細に辿って、それを一般の日本人に分かりやすく記述し、説明して頂きたいのです。アメリカの医療保険制度について、アメリカの大多数、特に低収入階層の人々が求めた「単一支払い者制度(single-payer system)」、つまり日本やカナダや英国の制度に似た医療保険制度の政府一元化を、2006年の一時点でオバマその人も支持すると(選挙の票集めのために)明言していたのですが、大統領就任確定の頃から、単一支払い者制度を主張する声を、一貫して閉め出そうとした過程、関係閣僚の人事、議会でのノラリクラリ作戦、・・・、こうしたことを、くわしく辿ってほしいのです。

その後ろに一貫して見えるのは、オバマ政権の医療保険業界との密接な関係です。アメリカでは、保険会社から医療費支払いを断られて死ぬ人が一日平均約百人は居ると考えられています。また、個人の破産の人数では医療保険に加入していないために高額の医療費を支払うことを強いられての破産が最高です。今度、オバマ政権の「チェンジ」の成功例として、大いに宣伝されるにちがいない新しい医療保険制度の本質は、医療保険業界側の、僅かばかりの、計算づくの譲歩に過ぎないと、私は考えます。これまでの制度の恐るべき欠陥から生じた死者や破産者の数が少しは減るでしょう。しかし、これまで酷い犠牲を強いられてきた低所得者層の不満は、決して解消しないと思います。それは、1年か2年のうちにはっきりするでしょう。

ただ、私がここで問題としているのは、新しい医療保険制度の内容や効果そのものではありません。それが法案として長い時間をかけて審議され、署名されるまでのオバマ・チームの巧妙なノラリクラリ作戦の方に注目してほしいのです。結局のところ、オバマ政権が、当初から狙っていたものを見事に手に入れた、そのやり方です。私が、オバマ・チームを、稀代のコン・マン・チーム、詐欺師集団と呼ぶ理由はそこにあります

始めは、いつもなかなか良いことを言うのです。しかし、本当に達成したいことは別に決めているのです。_ ホンジュラスについても全く同じです。いや、オバマ政権のラテン・アメリカ政策についても、というべきでしょう。予期したとおり、アメリカはみごとにセラヤ大統領を失脚させることに成功しました。はじめオバマ・チームは、「武力で現大統領を追い出すなんて、そんな乱暴は許されない」などと、まことしやかなことを言っていたのです。

専門の学者先生の方々に、ことの始まりから終わりまでの、オバマ・チームの狡猾極まるノラリクラリぶりを、われわれ日本の大衆のために、白日のもとに晒してくださるようお願いしたいのです。左翼的見解/右翼的見解といったことに関係ありません。事実を並べて、整理して下さればよいのです。コロンビアについても同じです。この国はいつの間にかアメリカの軍事的属領になってしまったようです。_ オバマ大統領の世界非核化宣言も、「広島、長崎を訪れることを名誉に思うだって、なかなか良いこと言うじゃない!」と日本人をうならせる始めのステージにあります。しかし、ヒロシマ・ナガサキといえば、パールハーバーと返してくるアメリカの心から、非核、反核の一体なにが期待できるでしょうか。私は、広島、長崎の人々、日本人全体が、この史上稀に見る大コン・マンに信頼(コンフィデンス)を置いて、後になってから、「ああ、やられた」と後悔することがないように、祈ってやみません。
藤永 茂 (2009年11月11日)
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上のブログに書いたことを今読み返して、訂正しなければと思う事は何もありません。危惧を募らせている事柄は多々あります。その一例は、日本のテレビや新聞雑誌にしきりに見られるアメリカの医療保険会社の物凄い売り込み作戦です。オバマ大統領をすっかり丸め込んだ巨大業界ですから。いざとなるとなかなか払いが渋いのです。いつの日か日本でも大やけどをする人が出ないといいのですが。

藤永 茂 (2011年5月25日)



関連

カルト色を強めるイスラエルがオバマ米大統領の行った当たり障りのない演説に噛みつき、軌道修正させることに成功 2011.05.23
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201105230000/

バラク・オバマ米大統領が5月19日に行った「中東和平」に関する演説は、早くも崩れ去った。そもそも具体性のない提案だったのだが、22日に行われたAIPAC(イスラエル・ロビー団体)での演説で軌道修正、1967年6月の第3次中東戦争をイスラエルが始める前とは違う国境線をイスラエルとパレスチナは交渉するのだと演説している。この演説ではイスラエルが主張する「安全保障」に同意、ガザへ軍事侵攻し、白リン弾などを使って多くの住民を虐殺した事件でもイスラエルを支持していることを再確認している。

そもそも、「1967年以前の境界線」も公正なものではない。本ブログでは何度も指摘しているので食傷気味だろうが、忘れてはならない事実だ。水源があって農耕が可能な地域は「ユダヤ人の国」に、砂漠地帯はアラブ人の国に割り当てられていた。

しかも1948年4月4日に始まった「ダーレット作戦」でアラブ系住民を虐殺、多くのアラブ系住民が追い出されて難民化している。こうした状況を改善しようとした国連調整官のフォルケ・ベルナドッテ伯はエルサレムの近くでシオニストに暗殺されてしまった。

19日の演説でオバマ大統領はイスラエルの変化を過小評価していたという見方がある。この変化はロシアの動向と無関係ではない。

ソ連が消滅する過程で「西側」の支援を受けたボリス・エリツィンが実権を握り、「私有化」と「規制緩和」で一部の人間が巨万の富を得ている。こうした富豪は経済だけでなく政治もコントロールすることになったのだが、1999年12月にウラジミール・プーチンが大統領代理に就任すると変化し始める。翌年5月には正式な大統領となり、エリツィン時代に出現した富豪はイギリスやイスラエルへ亡命した。中でも有名な人物がボリス・ベレゾフスキー(イギリスへ亡命した後、プラトン・エレーニンと改名)。こうしたグループは、亡命先で影響力を強めていく。

イギリスでベレゾフスキーは西側の大物と親交を結ぶが、中でも重要な人物がジェイコブ・ロスチャイルド卿と息子のナット・ロスチャイルドだろう。イスラエルへ亡命したベレゾフスキーの仲間もいる。彼らはその後、莫大な資金を背景にしてイスラエルに大きな影響を及ぼすようになった。

こうした流れの中、イスラエルで頭角を現したのがアビグドル・リーバーマン外相。狂信的なユダヤ至上主義者で、イスラエルから「非ユダヤ人」を排斥しようとしている。すでに「非ユダヤ系住民」に対して「ユダヤ人国家」への忠誠を誓わせる法律がイスラエルでは作られ、「イスラエルの主権を害する」と認定された人間から市民権を剥奪できるという「市民法」も承認されている。イスラエルでは「民族浄化」を推進しているのだ。

リーバーマン外相たちだけでなく、1970年代にアメリカのキリスト教原理主義者と手を組むことで実権を奪ったリクード(ウラジミール・ジャボチンスキーの「修正主義シオニスト世界連合」の流れをくむ)は第3次中東戦争で占領した地域でも満足していないと見られている。彼らは旧約聖書に書かれた「約束の地」を考えている可能性があるのだ。 (引用注:「約束の地」派は、世界人間牧場派イルミニストによって、第三次世界大戦に利用される予定だと思う。焚き付けて誘導していくのである。この点で、アジア人も注意が必要なのだが、おバカな代理人たちが、「驕り昂ぶりの」ロボットしているので、いやはやなんとも状態なのである)

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旧約聖書の何カ所かでそうした土地について記述されている。例えば、創世記によるとナイル川から、ユーフラテス川までがイスラエルだということになっている。つまり、エジプトの一部、ガザ地区、ヨルダン川西岸、ヨルダン、レバノンの全て、さらにシリアやイラクの相当部分を含む地域だ。

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1967年の戦争で占領したエルサレム、ガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸、ゴラン高原などでは足りない。目的を達成する前に停戦してしまったということだろう。

カルト色を強めているイスラエルは、オバマ大統領の中身のない発言も許せなくなっている。しかも、そのカルト国家は世界有数の核兵器保有国。ジミー・カーター元米大統領によると核弾頭の数は約150発、中には400発と推測している人もいる。

イスラエル・ロビー(カネ)だけでなく、核兵器もアメリカをコントロールする道具になっているはず。こうしたロビー団体や核兵器の脅しを押し返すだけの信念も度胸もオバマ大統領にはないということを、今回の一件によって再確認できた。 (引用注:「ない」に決まっています。シャレードですからね)


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by oninomae | 2011-05-26 00:07 | 政治詐欺・政治紛争  

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