モンサントのラウンドアップと出生異常 by F・ウィリアム・イングドール
http://tamekiyo.com/documents/W_Engdahl/roundup.html の転載です
モンサントのラウンドアップと出生異常 by F・ウィリアム・イングドール 2010年10月1日 (為清さんの掲載2010年10月2日)
Study Shows Monsanto ROUNDUP Link to Birth Defects By F. William Engdahl
(http://engdahl.oilgeopolitics.net/)

世界で最も普及している化学除草剤、モンサントのラウンドアップについては、動物のみならず人間に対しても毒性があり危険なことが理解されつつあるが、このことが最近の主要な科学調査でも確認された。
ブエノスアイレス大学医学部・分子胎生学研究所長でアルゼンチンの科学技術研究協議会に所属するアンドレス・カラスコ(Andres Carrasco)教授が率いる国際科学者チームが実施した最新の科学調査では、モンサントなどアグリビジネス業界が組織的にラウンドアップの安全性を偽ってきたことを示す驚くべき実証結果が発表されている。

農業で使用されているよりもはるかに濃度の低いラインドアップで出生異常との関連が示された。 この健康に及ぼす意味は重大である。今日、市場に出回っている主なGMO作物はすべて除草剤ラウンドアップに「耐えられる」ように遺伝子操作されている。
いわゆる「広域除草剤」としてモンサントがグリホサートの特許を取ったのは、遺伝子組み換え作物が商業化されるずっと前の1970年代だった。通常の利用法としては、噴霧(スプレー)して葉から吸収させたり、林業の除草剤として使用される。もともとラウンドアップという商品名でモンサントが特許を取得し、販売していた。ラウンドアップには、モンサント社が「企業秘密」として公表を拒否している非公開の化学物質が添加されている。2005年時点で、米国の大豆畑の87%に遺伝子組み換え・グリホサート耐性の品種の大豆が栽培されており、ラウンドアップが噴霧されている。

モンサントのRR(ラウンドアップ・レディー)GMO大豆などGMO作物の種子は、もっぱら特別にラウンドアップ除草剤に「耐えられる」ように遺伝子操作されている(畑の他の植物はラウンドアップで全滅する)ため、RRの種子を利用している農家は、ラウンドアップ除草剤も買わなければならない。種子と農薬を抱き合わせ販売する仕組みになっている。

この好都合な仕組みから生じている問題として、ラウンドアップ耐性の「スーパー雑草」が新たに生物学的災害となって出現していること(米国のGMO農業の過ちを教訓にせよを参照)もあるが、今回は農業用としては最も毒性の高い物質の一つであるグリホサートに出生異常との関連があることが示されたのである。 それにもかかわらず米国政府の環境保護庁(EPA)は、従来通り、ラウンドアップは「比較的毒性が低く、発癌性や催奇性の作用が無い」としている。
悪評の通り、米国では、1992年の「実質的に同じ」ドクトリンに基づき、政府が安全規制を決める際には、モンサントなどアグリビジネス業界の試験データに頼っている。 「実質的に同じ」ドクトリンとは、GMO種子が通常の種子と「実質的に同じ」であり、第三者による健康面や安全面の検証は必要ないとみなすことだ。除草剤については若干扱いが異なるが、今日までラウンドアップに寛大な規制がなされてきた背景には、米国政府の政策にアグリビジネスが大きな影響を及ぼしている事実がある。
警戒すべき結果
この度、アンドレス・カラスコ(Andres Carrasco)教授が率い、イギリス、ブラジル、アメリカ、アルゼンチンの研究者が参加する新しい国際的科学者チームは、農業の散布で使用されているよりもはるかに低く、EUで現在認められいる商品残留レベルよりもずっと低い濃度のグリホサート(ラウンドアップの主要な有効成分)でカエルや鶏の胚に奇形が発生することを証明した。[1]
カラスコのチームは、モンサントの遺伝子組み換えRR(ラウンドアップ・レディ)大豆が大規模単一栽培され、日常的に飛行機による農薬散布がなされているアルゼンチンの農村地帯で高い割合で出生異常が発生していたため、この胚に与えるグリホサートの作用を調査することになった。
RR大豆は、ラウンドアップ除草剤に耐えられるように組み換えられているため、作物の成長中にたっぷりとラウンドアップを散布して雑草を殺すことができる。
カラスコは、欧州議会(ブリュッセル)の第6回ノーGMO地帯ヨーロッパ会議(European Conference of GMO Free Regions)の記者会見で研究チームの調査結果を発表した。 「研究室での実験結果は、妊娠中にグリホサートにさらされたヒトに生じた奇形と一致している」と彼は述べた。
アルゼンチンでRR大豆の栽培が始まり、ラウンドアップが広範囲に空中散布されるようになってから2年後の2002年より、人間の奇形が多数報告されるようになっていた。

カラスコの研究チームが使用した実験動物は、人間に類似した発達メカニズムを持つ。研究者たちは、「畑でラウンドアップにさらされた人間が出産した子供の臨床所見について懸念を呼ぶ」結果になったと結論付けている。「グリホサートの毒性はあまりに過小評価されている。場合によっては猛毒になる」とカラスコは述べている。

欧州で遺伝子組み換えRR大豆が商業化されたのを受け、1997年にEUでは、大豆に容認されるグリホサートの最大残留レベル(MRL)を、0.1mg/kgから20mg/kgへと200倍に引き上げた。 カラスコは、2.03mg/kgのグリホサートを注入した胚で奇形が生じたことを確認している。通常、大豆には、最高17mg/kgのグリホサートが残留している。
2010年8月、Chaco州のLa Leonesaの町〔アルゼンチン〕で、カラスコの研究結果の講演を聴くために集まった人々を組織的な暴徒が攻撃した。この攻撃には地元の農業関係の人物がいたという目撃証言がある。アルゼンチンのサンタフェ・サンホルヘの主婦Viviana Peraltaは、ラウンドアップを散布する飛行機が家の付近を飛んだ後に、赤ちゃんと一緒に入院になった。Peraltaなど住民が訴訟を起こした結果、地方の裁判所の判断により、住居の近くでラウンドアップなど農業用の化学物質の散布することは禁止になっている。

(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)
関連情報
原文 Study Shows Monsanto ROUNDUP Link to Birth Defects (global research.ca)
http://globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=21251
脚注
1 Paganelli, A., Gnazzo, V., Acosta, H., López, S.L., Carrasco, A.E. 2010. Glyphosate-based herbicides produce terato-genic effects on vertebrates by impairing retinoic acid signaling. Chem. Res. Toxicol., August 9. http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/tx1001749
参照
米国のGMO農業の過ちを教訓にせよ F・ウィリアム・イングドール
http://satehate.exblog.jp/14978042
ハイチの農民たちへの475トンの遺伝子組み換え種子というモンサント社の致命的な贈り物
http://satehate.exblog.jp/14373588
ビル・ゲイツ「ワクチンは人口削減が目的」と語る F・ウィリアム・イングドール 2
http://satehate.exblog.jp/14275029
北極の「最後の審判の日・種子貯蔵庫」 By F. William Engdahl 3
http://satehate.exblog.jp/13743045
以下は、ここでの主役の参照論文
ラウンドアップの成分には、胎児の分化成長中に、形態分化誘導物質であるレチノイン酸の作用を妨害することによる奇形化作用があると結論 (絵でだいたいわかります)
Glyphosate-Based Herbicides Produce Teratogenic Effects on Vertebrates by Impairing Retinoic Acid Signaling (PDF)
Alejandra Paganelli, Victoria Gnazzo, Helena Acosta, Silvia L. Lpez and Andrs E. Carrasco* , Laboratorio de Embriologa Molecular, CONICET-UBA, Facultad de Medicina, Universidad de Buenos Aires, Paraguay 2155, 3° piso (1121), Ciudad Autnoma de Buenos Aires, Argentina, Chem. Res. Toxicol., Article ASAP, DOI: 10.1021/tx1001749, Publication Date (Web): August 9, 2010, Copyright © 2010 American Chemical Society, * Corresponding author. Phone: +5411 5950 9500 ext. 2216. Fax: +5411 5950 9626. E-mail: acarrasco@fmed.uba.ar.
Abstract

The broad spectrum herbicide glyphosate is widely used in agriculture worldwide. There has been ongoing controversy regarding the possible adverse effects of glyphosate on the environment and on human health.
Reports of neural defects and craniofacial malformations from regions where glyphosate-based herbicides (GBH) are used led us to undertake an embryological approach to explore the effects of low doses of glyphosate in development.
Xenopus laevis embryos were incubated with 1/5000 dilutions of a commercial GBH. The treated embryos were highly abnormal with marked alterations in cephalic and neural crest development and shortening of the anterior−posterior (A-P) axis. Alterations on neural crest markers were later correlated with deformities in the cranial cartilages at tadpole stages. Embryos injected with pure glyphosate showed very similar phenotypes.
Moreover, GBH produced similar effects in chicken embryos, showing a gradual loss of rhombomere domains, reduction of the optic vesicles, and microcephaly.
This suggests that glyphosate itself was responsible for the phenotypes observed, rather than a surfactant or other component of the commercial formulation.
A reporter gene assay revealed that GBH treatment increased endogenous retinoic acid (RA) activity in Xenopus embryos and cotreatment with a RA antagonist rescued the teratogenic effects of the GBH.
Therefore, we conclude that the phenotypes produced by GBH are mainly a consequence of the increase of endogenous retinoid activity. This is consistent with the decrease of Sonic hedgehog (Shh) signaling from the embryonic dorsal midline, with the inhibition of otx2 expression and with the disruption of cephalic neural crest development.
The direct effect of glyphosate on early mechanisms of morphogenesis in vertebrate embryos opens concerns about the clinical findings from human offspring in populations exposed to GBH in agricultural fields.
付録
もし新人類が生まれたら、それは悪魔のようなものになるだろうナ!?
http://quasimoto.exblog.jp/13352289/
よんでもらえるかどうかわかりませんが、井口先生の記事にはコメント欄がないので、ここに書いておきます。
遺伝子異常による奇形もありますので、話の大筋とは関係ないかもしれませんが、
「奇形とは、遺伝子異常から来るものである」というところは、正確にはまちがいです。この記事でもそれが示唆されています(この他に遺伝子変異原が入っていないかどうかは別問題です)が、遺伝子自体に異常が生じていなくても、遺伝子発現の異常で奇形は起こります。サリドマイド事件もその良い例です。サリドマイドは遺伝子の制御領域に親和性が高くその結果、発現中に取り憑いて邪魔をし誤動作させ、奇形に導くことが判っています。正確には分かりませんが、遺伝子欠陥異常による奇形は全体の5%以下くらいで、他は遺伝子発現攪乱ではないかという推定があったと思います。
奇形の人の遺伝子が必ず傷ついていて子供も奇形になるとは限らないことを言っておきたいのでここに記しておきます。
農薬、除草剤、ラウンドアップ、グリフォサート、形態形成阻害、奇形、レチノイン酸
by oninomae | 2010-10-03 02:23 | バイオハザード・GMO食品