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オバマ大統領は反核でない 藤永茂 1


[号外] オバマ大統領は反核でない 藤永茂(私の闇の奥) 2010/02/17 
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2010/02/post_c6dc.html その1

昨年の4月22日のブログ『オバマ大統領は本当に反核か?』で、オバマ大統領と現政権が本当に反核かどうか、大いに疑わしいと述べましたが、ここに来て、オバマ大統領は反核でないことが、決定的に明らかになってきましたので、“号外”的な意味を込めて、報告したいと思います。日本の反核運動が、この“大いなる欺瞞”に引きずられる事のないことを、祈っています。 
少し復習をして頂くために、昨年4月22日のブログ記事

オバマ大統領は本当に反核か? 2009/04/22
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2009/04/post_ddd0.html

の始めの部分を再録します。:

*****
オバマ大統領は本当に反核か?

心の一番奥底で核兵器が良いものだと思っている人はおそらく居ないでしょう。核兵器のない世界の方が核兵器のある世界より、原則的に、好ましいと考えない人はおそらく居ないでしょう。しかし、この基本的レベルから離れたところで、つまり、条件付きで、核兵器禁止を唱える政治家には、厳しい目を向けなければなりません。 

今、机の上に2009年4月6日付けの西日本新聞からの切り抜きがあります。4月5日オバマ大統領がチェコの首都プラハで核兵器の廃絶を唱えた演説についての記事です。「核廃絶へ包括的構想」、「核廃絶米外交の主流に」、「核超大国の変化期待」、「長崎の被爆者:廃絶へ強い後押しに」と記事が並んでいます。

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私たちがここで先ず思い出さなければならないのは、2007年に、あの核抑止論の急先鋒だったキッシンジャーが急に核廃絶を言い出したことです。西日本の記事には、

■ オバマ大統領の演説は2007年以来、シュルツ、キッシンジャー両元国務長官らが「核なき世界」を提案し、世界の賢人たちを巻き込んで広めている動きを反映した。演説の起草に参加した核軍縮専門家の一人は「核なき世界はもはや平和屋の見果てぬ夢ではない。米外交の主流が唱えている」と力説。■

とあります。ソースは(ワシントン共同)、「世界の賢人」は、おそらく、「pundits of the world」といった文章の和訳でしょう。これらのパンディットたちの考えていること、彼等が頭の中に描いていていることは、「長崎の証言の会」の皆さんが胸に抱いておられること、希求しておられることとは、殆ど何の重なりもない事ではないかと、私は強く危惧します。 キッシンジャーが実に恐るべき人物であることは皆さんの殆どがご承知の筈です。
 
同じ記事の中にオバマ大統領の演説の内容がまとめてあります。

(1)核兵器のない世界に向け具体的な措置取る
(2)米、ロシアの核兵器は最も危険な冷戦の遺物
(3)世界核安全サミットを1年以内に開催
(4)ロケットを発射した北朝鮮はルールを再び破った
(5)包括的核実験禁止条約の批准目指す
(6)兵器用核分裂物資生産禁止条約の交渉開始目指す
(7)テロリストの核兵器獲得は最大の脅威
(8)核物質の安全性を4年以内に確保
(9)イランの脅威が存在する限り米ミサイル防衛(MD)計画進める

オバマ大統領が一個の人間として核兵器反対であるかどうかは、ここで議論しても何の意味もありません。もしそうでなかったら、悪魔です。アメリカの大統領としての今回の行動は全く政治的なものです。そのようなものとして受け取らなければ、私たちは判断の誤りを犯すでしょう。彼のほとんど唯一の関心事はアメリカとアメリカ国民の安全と世界でのアメリカの地位の保持です。シュルツ、キッシンジャー両元国務長官の関心事と全く同じです。(引用注:「アメリカとアメリカ国民の安全と世界でのアメリカの地位の保持」が、彼らの「唯一の関心事」なんてわけはないですがね。核兵器は自分たちの管理下のみに独占し、「アメリカ国民はむしろもっと奴隷化したい」、「アメリカ国民」も「世界政府に跪かせたい」が本音である)

核兵器の開発と保有に関する世界情勢が変化していて、このままでは昔よりアメリカが危うくなってきたことに対する反応です。世界と全人類の平和のためにオバマ大統領が乗り出して来たなどと早とちりをしてはなりません。彼は人々が喜びそうなことを言いながら、実は、別のことの実現を狙う魔術師です。核兵器を実際に使ったアメリカが、核兵器のない世界を目指して、主導権を握るという大見得はいいのですが、オバマ大統領の本当の狙いは上の(4)から(9)に滲み出ています。
***** (再録おわり)
 
今回は、上述した、2009年4月5日、オバマ大統領がチェコの首都プラハで核兵器の廃絶を唱えた演説を促した、というよりも、この大いなる反核欺瞞の有機的一部として立案された反核演説が立脚したと思われる、キッシンジャーほか3名がウォール・ストリート・ジャーナルに発表した三つの論説について、やや詳しく見てみようと思います。
 
三つの論説の著者は、いずれも、次の4名:キッシンジャー(1973年から1977年まで国務長官)、シュルツ(1982年から1989年まで国務長官)、ペリー(1994年から1997年まで国防長官)、ナン(上院軍事委員会の前委員長)で、これから先、簡単のため、「四人組」と呼ぶことにします。

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「四人組」の第一論説は2007年1月4日にウォール・ストリート・ジャーナルが「キッシンジャー、シュルツ、ペリー、ナンが核兵器なしの世界を呼びかけ」という賑々しい見出しで掲載されました。

Kissinger, Shultz, Perry & Nunn call for A World Free of Nuclear Weapons The Wall Street Journal January 4, 2007
http://www.2020visioncampaign.org/pages/113/Kissinger_Shultz_Perry__Nunn_call_for_A_World_Free_of_Nuclear_Weapons

内容は、冷戦とその終結に至る歴史のかなり詳しい復習と、その後の核兵器拡散の状況の記述を含み、長文の論説ですが、その結語には、次のような麗々しい文章があります。:

■ Reassertion of the vision of a world free of nuclear weapons and practical measures toward achieving that goal would be, and would be perceived as, a bold initiative consistent with America’s moral heritage. (核兵器のない世界のヴィジョンとその目標に向かっての実行可能の諸方策を、いま改めて主張することは、アメリカの道義的伝統に一致する大胆な先導行為であり、また、そのようなものとして認められるであろう。)■
 

「四人組」の第二論説は、2008年1月15日のウォール・ストリート・ジャーナルに、「キッシンジャー、シュルツ、ペリー、ナンが核兵器なしの世界を再び呼びかけ」という見出し付きで掲載されました。それは

TOWARD A NUCLEAR-FREE WORLD

■ 核兵器、核技術、そして核物質の加速的拡散が、われわれに行動を促す所まで運んで来た。これまでに発明された最も恐るべき兵器が危険な人間たちの手に渡る大変高い可能性に、われわれは直面しているのである。■

という文章で始まります。「四人組」の本当の関心事が顔を出し始めたと見てよいでしょう。これに続いて、「四人組」の第一論説に、ゴルバチョフを始めとする世界中の賢人からの反応があり、米国内でも、マドレーヌ・オールブライト、リチャード・アレン、ズビニュー・ブレジンスキー、ロバート・マクナマラ、コリン・パウエル、などなどの多数の要人が論説の趣旨への支持を表明したことが報告されています。 (私の目には、危険人物のリストのように思われてなりませんが。)

また、世界の核弾頭の95%を所有しているアメリカとロシアの然るべき関係も論じてあります。この第2論説も長い論文で、興味のある方は、是非原文をご覧下さい。ただ、時間的には、オバマ大統領がチェコの首都プラハで核兵器の廃絶を唱えた演説(2009年4月5日)とオバマ大統領のノーベル平和賞受賞(2009年12月10日)は、この「四人組」の第二論説(2008年1月15日)と、次に取り上げる、問題の第三論説(2010年1月19日)との間に位置していることを指摘しておきます。

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キッシンジャーはノーベル平和賞の前の受賞者として、受賞者の候補を推薦する権利を持っています。オバマ大統領のノーベル平和賞受賞もキッシンジャーが打った国際的大芝居の一幕であったとしても特別びっくり仰天するほどのことではありません。

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続く

by oninomae | 2010-02-25 21:47 | 政治詐欺・政治紛争  

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