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なし崩しの金融緩和法案の流れ by 菊川征司

再び菊川征司さんの本より


差別廃止運動からサブプライムヘ--"金融版"公民権法の誕生


今回の金融危機の元凶となった法改正の歴史を振り返ってみます。

国際金融資本家たちを利する環境作りのための法令制定の下敷きになったのは、1968年の公平住宅法(The Fair Housing Act)や1974年の機会均等金融法(The Equal Credit Opportunity)や1975年の家のローンの開示法(The House Mortgage Disclosure Act)などです。差別をなくそうとする殊勝な考えの下にこうした法律が作られました。

これは人種の坩堝であるアメリカならではの法律です。人種、宗教、出身国、性別、年齢、既婚・未婚などによって差別することを禁じた、1964年のアメリカ公民権法の思想が引き継がれています。いわば"公民権法の金融版"ともいうべきものです。

詳細に時系列を追って説明します。

①[1977年]・・・先ほど紹介した、人権の擁護を重要視するアメリカならではの、進歩的で素晴らしい法律群の意図を汲んだものが、第95回アメリカ議会が1977年に作った「(貧困)地域再投資法」(Community Reinvestment Act)です。これがウォール街の幹部たちに利用されて、今回の金融危機の発生原因になったとされています

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アメリカは住む地域によって、人種、年収がまったく違ってくることが多いのです。地図上に赤い線で囲んだ地域は都市の中心部のいわゆるダウンタウンと呼ばれる黒人の貧民窟です。そこの住民には近所の銀行でも口座が開設できなかったり、お金を借りられなかったり、クレジットカードも発行してもらえないといった差別的な扱いが日常的に行われていました。

アメリカのテレビの刑事もののドラマを見ていると必ずといっていいほど出てくる、黒人しか住んでおらず、見るからに荒れ果てた地域が赤い線で囲まれた地域です。これと同様の住居地域による差別は、21世紀に入った現在も自動車の保険会社が実行しています。

州が違えば保険の掛け金の額が違うのは当たり前ですが、同じ州でも町によってまったく違います。ニューヨーク州において保険料が一番高いニューヨーク市から隣の町へ住所を移すだけで、保険の金額が2割から3割はダウンします。

公民権法では禁止されていないのですが、この地域差別をなくそうという高尚な趣旨でできたのが「地域再投資法」なのです。簡単にいえば裕福な地域だけでなく、貧乏な地域に住む人にもお金を貸すべきだ、という趣旨のもとに作られたのです。

金融機関はお金を貸し出す時の基準をそれぞれに設けていますから、その基準に合致していれば、貧困地域に住んでいる人にでもいくらでもお金を貸し出すことはできたのです。

しかしアメリカという国には、日本のように本籍や現住所といった制度はありません。それで貧民窟に住む人たちがお金を借りにきても、その人の情報がまったく手に入らないケースが多かったのです。

以下は2007年の地域再投資法施行の記念日における、バーナンキ連銀議長の言葉です。

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「こういう(貧しい)人たちの情報を集めることが大変だったので、各金融機関が及び腰になってしまって貸し出しか行われなかったのかもしれません。そして銀行も含めて今まで金融機関が見向きもしなかった評価の低い地域にも入っていくようになった理由のーつに、この1977年の地域再投資法が触媒の働きをしたということがあります」。

この法律ができたことによって貸し出し基準が下げられました。それまでは貸し出されていなかった層の人にもローンが組まれて、それが'80年代のS&L危機を引き起こすことになります

そしてこの「地域再投資法」をたたき台にして、その後何度も改正(=ウォール街を利する実質的な改悪)が加えられていくのです。


なし崩しの金融緩和法案の流れ

②[1989年]・・・1989年に「金融機関改革の回復と強制法」(Financiak Institutions Reform Recovery and Enforcement Act of 1989)ができました。

この法律は'80年代のS&L危機の経験を基にして、金融強化策の一環として父・ブッシュの時代に作られました。

その目的は金融機関がどのくらい地域再投資法を遵守しているか、"抜群"、"満足"、"向上の余地あり"、"まったく守っていない"の4段階で表示することを取りいれたのです。

バーナンキは、この法律が義務づけたレーティング制度によって、「弁護団体や調査団体、その他の分析団体がより詳細に多量の銀行の業務を査定できるようになったと述べています。 その結果銀行にとっては、この法律は大きなプレッシャーになり、必然的に貧困地域への貸し出しが推進されていきました。

③[1992年]・・・1992年にできたのが「連邦住宅金融の財務の安全と健全性法案」(Federal Housing Enterprises Financial Safety and Soundness Act of 1992)という長い名前の法案です。フレディ・マックとファニー・メイの2杜だけに低所得者層向けのローンの買取と裏書を促進するように、尻をたたいたのです。

これを受けてファニー・メイは1997年から2000年11月までに、70億ドル(7000億円)の地域再投資法関係のビジネスを行い、ゴールは200億ドル(2兆円)と発表したのです。そして翌年の2001年には100億ドル(1兆円)を獲得し、2010年までに5000億ドル(50兆円)の金額の地域再投資法関係のローンを獲得するという行動計画書を出したのです。もうめちゃめちゃな売り上げ予想の数字です。

これほど巨額の売り上げ目標を達成するには、「プライム」(一流の、一級の)「サブ・プライム」(プライム水準より下)の区別なく、やみくもにローンを買いまくるしかなかったと思います。そしてそのすべてにウォール街のファンドがトリプルAという高評価をつけたのですから、飛ぶように売れたのも当然ですただその分だけ被害額が大きくなってしまいました。 

④[1994年]・・・1994年の「リーガル・二ールの州間金融と支店の能率向上法」(Riegal-Neal Interstate Banking and Branching Efficiency Act of 1994)は、他の州からの銀行が州内に支店開設の許可を申請した時の決断にあたって、1989年の「金融機関改革の回復と強制法」のレーティングに大きな比重を置くことを義務づけたのです。つまり他の州から支店を開きたいとやってきた銀行が、地域再投資法を遵守していなかったら支店開設を許可するなということなのです。

⑤[1995年]・・・1993年に、時の大統領クリントンは地域再投資法を改正して、基準をもっと明確にして査察方法をより一貫したものにするために、書類を減らし経費を削減するように当局に要請します。

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それにともなって1995年に当局は地域再投資法の大改正を行います。

対象となる貧困地域に、産業廃棄物の処理などの環境整備や工場跡地の再開発が必要な時は、それに融資することを許可しました。

あるワシントンのシンクタンクは、この条項は地域の経済と銀行にとって非常に金食い虫になって、長い日で見ると地域がよくなっても金融システムは悪くなると予想して、議会に削除することを進言したのでした。

この地域再投資法大改正が金融業の利益を押し下げるという意見に対して、連銀は1997年に出した調査報告書で、「貧困地域に融資している銀行は、その他の地域に融資している銀行と同じように高い利益をあげている」と反論したのです

つまりグリーンスパンの連銀は、貧乏地域の住民への貸し出しを奨励したのです。

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財務省が2000年に地域再投資法遵守の305行の金融業者の、1993年から1998年にわたる総額4670億ドル(46兆7000億円)のローンの内訳を発表しました。それによると貧困地域の貸し出しが39%の増加をみせたのに比して、より裕福な地域のローンは17%の増加をみただけでした。

そして1997年の10月には最初の貧困層向けのローン3846億ドル(38兆4600億円)のローンが債権化されて一般に売り出されましたその債権はベア・スターンズとファースト・ユニオン・キャピタルマーケットが合同で扱ったのでした (First Union Corporation5の資料による)。

この債権はフレディ・マックが裏書しトリプルAの格付けがつきましたから、売り出した途端に注文が殺到して予約だけで販売予定金額の6倍になったのでした。

サブプライム・ローンが原因で破綻した大型金融機関第1号がベア・スターンズでした。サブプライム・ローン債券を最初に売り出したのがベア・スターンズだっただけに、この種の債権を他社よりも相当多く抱えていたことが考えられます。


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⑥[1999年]・・・1999年にクリントンが、法の環境作りのとどめとして「グラム・リーチ・ブライリー法[Gramm-Leach-Bliley Act]」に署名しました。

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この法律は、銀行と証券の垣根を取ってしまった"金融緩和法"として知られています。

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クリントンはこの法律によって、「我々は銀行の力を拡大したので、この法律は地域再投資法の及ぶ地域を拡大することになる」といっています。

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いわば何でもありにしてしまったのですが、穿った見方をすると、将来金融危機が起こった時に行われるであろう金融業界の合併(=統制経済化)に向けての法律を、前もって整えたといえるかもしれません。

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菊川征司 世界恐慌という仕組みを操るロックフェラー 第4章 経済編:八百長 p264-271より

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郵政民営化の土台築くと西川氏 社長続投にあらためて意欲 2009年6月9日 19時27分
http://www.excite.co.jp/News/politics/20090609/Kyodo_OT_CO2009060901000778.html

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参院総務委で答弁する日本郵政の西川善文社長を見つめる鳩山総務相=9日午後

日本郵政の西川善文社長は、9日の参院総務委員会の郵政問題に関する集中審議で、鳩山邦夫総務相が西川氏の続投に反対していることについて、任期が切れる6月末以降の社長続投にあらためて意欲を示した。西川社長は「民営化の土台をしっかり築くことが責務だ」と強調。総務相は「私には(社長再任の)認可権限があり、その権限を信念に基づいて行使したい」と述べ、不認可姿勢を明確にした。


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<新型インフル>ワクチン2500万人分、年内に確保 2009年6月9日 20時17分
http://www.excite.co.jp/News/society/20090609/20090610M40.053.html

厚生労働省は9日、新型インフルエンザのワクチンについて、年内に最大約2500万人分を確保できるとの試算を明らかにした。製造ラインを新型に振り向けるため、季節性インフルエンザのワクチンは、08年の約8割にあたる約4000万人分確保した段階で製造を打ち切ることになるという。

新型インフルエンザ与党プロジェクトチーム座長の川崎二郎元厚労相は同省の報告を受け、国内で感染者が多い中高生ら10代と、医療関係者、妊婦や基礎疾患のある患者にワクチンを優先接種すべきだとの考えを示した。 同省によると、季節性のワクチンは例年約5000万人分製造し、大半がシーズン中に消費される。次のシーズンは新型流行の恐れがあるため、既に始まっている季節性のワクチン製造を、どの時点で新型に切り替えるかが焦点になっている。

試算によると、新型のワクチンを最優先にし、製造が可能になる7月中旬に切り替えた場合、12月末までに約2500万人分製造できる。季節性は約4000万人分となる。

実際の新型と季節性の製造割合は、世界保健機関(WHO)の見解や専門家らの意見を基に決定するという。【清水健二、内橋寿明】


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by oninomae | 2009-06-09 20:19 | 金融詐欺  

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