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アメリカ史を動かす鉄道会社とスタンフォード大学 by 広瀬隆

アメリカ史を動かす鉄道会社とスタンフォード大学

サウスダコタ州ウンデッド・ニー峡谷で、女子供を含むスー族のインディアンが白人の第七騎兵隊に虐殺される歴史的事件が起こったのは、それからほぼ二十年後、一八九〇年のことだった。このインディアン絶滅戦争で酋長シッティング・ブルを殺した部隊の指揮官こそ、カリフォルニア鉄道四人組の頭領ハンティントンの一族だった。

かくてこの線路が、現在までアメリカ史を動かし始めたのである。ユニオン・パシフィック鉄道の社長アヴェレル・ハリマンが、民主党の大統領フランクリン・ルーズヴェルトと幼友達だったため民主党の外交官、商務長官、大統領特別補佐官をつとめ、
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彼の未亡人パメラ
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ロバート・ルービンと組んで
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アーカンソー州知事ビル・クリントンに資金をつぎ込み、大統領に仕立て上げた。(引用注:Northwest Arkansas Regional Airport が中国とウォルマートをfreeで繋いでいる)

クリントンも鉄道遺産から生まれた民主党大統領だった。
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ユニオン・パシフィック鉄道の枕木を供給する森林業で成功した一族マリナー・エッケルズ[1890-1977](Ecclesと書いてエッケルズと発音する)は、一九三四年から連邦準備制度理事会(中央銀行)の総裁(翌年改組して今日の議長)を十四年もつとめ、ハリマンと組んで「恐慌対策」(「」は引用者)に取り組んだのである。

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                  エッケルズとルーズベルト

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Eccles Building
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彼は大陸横断鉄道が接続したユタ領オグデン近くに住み、ユタ建設社長として鉄道で大きな財をなし、第二次世界大戦中に戦後のIMF(国際通貨基金)と世界銀行の経済体制を決定したブレトン・ウッズ会議のアメリカ代表である。

彼の弟ジョージはユニオン・パシフィック鉄道重役となり、二〇〇三年現在も一族のスペンサー・エッケルズがハリマン一族と共に重役をつとめる。

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西部の四人組は路線を南部に延ばすため、サザン・パシフィック鉄道も設立し、さらにハンティントンは鉄道利権を次々に買い取って、北東部のチェサピーク・オハイオ鉄道の社長にも就任した。後者が、ブッシュ政権に財務長官ジョン・スノーを送り込んだ
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CSXの母体となる大鉄道である。サザン・パシフィックは太平洋岸からテキサスを通って南部ルイジアナ州ニューオルリーンズまで路線を延長し、ついにはサザン・パシフィックがカリフォルニア、ネバダ、ユタで連邦政府に次ぐ最大の土地所有者となり、三八〇万エーカー(四六億坪)を支配したのである

こうした独占に対する激しい非難の声はあがったが、ハンティントンは耳を傾けるどころか、石炭輸送のためにチェサピーク・オハイオの路線を延長してヴァージニァ州の海岸まで達し、終着駅に東海岸最大の不凍港ニューポートニューズの町を建設、ここが全米最大級の軍港に発展していった。

ヴァージニァ州は、初代大統領ワシントンから、ジェファーソン、マディソン、モンロー、タイラーまで五人の大統領を生み出し、南北戦争時代には南軍の主力となった保守的地盤の代表だが、現在ヴァージニア州の最大企業が、ニューポートニューズ造船である。二OO三年にペルシャ湾に展開してイラク攻撃の主力艦となった原子力空母エイブラハム・リンカーン、セオドア・ルーズヴェルト、ハリー・S・トルーマンを始め、エンタープライズ、力ール・ヴィンソン、ニミッツ、ロナルド・レーガンなどを次々と進水させ、海軍に納めてきた。二〇〇一年のアフガン攻撃中に同社を買収した全米第三位の軍需産業ノースロップ・グラマンが、共和党の大資金源である。

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この巨大買収事件は、ニューポートニューズに最も大きな影響力を持つ地元の上院議員で軍事委員長ジョン・ワーナーが動いて成立させた軍事ビジネスで、当時彼がラムズフェルド国防長官に宛てた書簡には、「ニューポートニューズ買収計画は、アメリカ海軍の国家安全保障、すなわち戦艦製造に関わるので、急いで検討するように」と書かれていた。
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明らかに買収を急いで承認するよう圧力をかけた文面である。ワーナーは、共和党フーヴァー政権の財務長官アンドリュー・メロンの孫と離婚後、女優エリザベス・テイラーと再婚し、夫妻が屋敷をレーガンの大統領選挙事務所として提供した。二〇〇三年にはブッシュ政権の実用小型核兵器開発計画を推進するリーダーとなった。
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ニューポートニューズ造船買収では相当な利権が動いた。代々の共和党支持者であるマイクロソフト会長ビル・ゲイツは、自分の投資会社カスケードを通じて、当時ニューポートニューズ造船の社外最大株主となり、八パーセントの株を保有していた。インターネットを通じてイラク攻撃反対の反戦運動が世界的に拡大しながら、その裏では世界を席捲するコンピューターソフト"ウィンドウズ"の売上げが、イラク攻撃の軍艦と、艦上から発進する戦闘機などの資金源となった可能性は高い。

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ビル・ゲイツは九七年に通信会社コムキャストに一〇億ドルの投資をおこない、これを機にマイクロソフトが高速インターネットビジネスに大きく踏み出していたからである。コムキャスト創業者のダニエル・アーロンは、一九三七年にナチスを逃れて渡米したユダヤ人一家で、六〇年代にフィラデルフィアの実業家ラルフ・ロバーツにケーブル事業への投資を持ちかけ、ジュリアン・ブロドスキーを加えたトリオ経営で次々と買収を重ねて経営を拡大してきた。

財務と資金集めを担当したブロドスキーが、ラザール・フレールを動かすロスチャイルド金融財閥の大御所フェリックス・ロハティンと組んで
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全米トップのホームショッピング・チャンネルQVCを九〇年代に買収し、九七年にビル・ゲイツをコムキャストに取り込んだのである。二〇〇二年秋にAT&Tブロードバンドを買収して、全米最大の通信ケーブル会社となったマンモス企業コムキャストは、軍需産業とつながることになるのである。


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西部の四人組に物語を戻そう。四人組の野望は鉄道だけでは満足せず、あり余る資産を持ってサンフランシスコから横浜・香港へと航路をつなぐ蒸気船会社にまで利権を広げた。

一八八五年には資産三〇〇〇万ドルのスタンフォードが上院議員に当選し、議会で名高い通称"百万長者クラブ"の、一員に列した。百万長者と言っても、GNP比率で換算して二〇〇〇年の二四〇億ドル、ほぼ二兆六〇〇〇億円という途方もない資産だった。

しかし、いくら大金があっても人間が幸せになるわけではない。スタンフォードは前年一八八四年に愛する一人息子を失って、悲しみに打ちひしがれていた。亡き息子を偲んで、自分の牧場を大学キャンパスの土地として提供し、二〇〇〇万ドルを投じて設立したのが現在のスタンフォード大学である。ここを巣立った学生の中から、ヒューレット・パッカードシスコ・システムズなどシリコンバレーの産業をになうベンチャーの起業家が続々誕生していった。ミスター・ガイアツと呼ばれた駐日大使マイケル・アーマコスト(引用注:「小沢ハンドルの使い手)、クリントン政権で北朝鮮危機を煽った国防長官ウィリアム・ペリー、ブッシュ政権の大統領補佐官コンドリーザ・ライスもスタンフォード大学教授の履歴を持つ。一九九〇年代に隆盛をきわめ、ウォール街の株価を一直線に上昇させたインターネット通信ビジネスは、スタンフォードの鉄道遺産でもあった。

四人組の一人、工事監督者クロッカーも息子たちに二〇〇〇~四〇〇〇万ドルの遺産を残してこの世を去り、ハンティントンが一九〇〇年に死去した時、推定遺産は六〇〇〇~七〇〇〇万ドルだった。四人組の資産があまりに巨大だったため、彼らの遺産相続争いは熾烈をきわめ、一九〇五年にはスタンフォード未亡人のジェーンが日本に向かう途次、ホノルルで謎の薬物中毒死を遂げ、過失によるものか、他殺か、今もって不明である。政界・財界を支配した四人組が、個人として得た政府債券額は途方もなく、所有地は四五〇万エーカーに達したが、実際に彼らがどれほどの収益を得て、どこに蓄財されたかという肝心の結論は、永遠の謎となっている。 議会が彼らの資産を調べようと鉄道持株会社に会計帳簿の提出を求めた途端、ちょうど"不幸な火事"に見舞われて会計記録がすべて消失してしまったからである。 (引用注:これまた、最近も同じようなことが...)

広瀬隆 アメリカの保守本流 (2003.9.22) 第二章 アメリカの鉄道資本とは何か p89-94より

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by oninomae | 2008-11-14 21:01 | イルミナティ  

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