八月八日(水)晴 ソ連参戦 by 黒木雄司

八月八日(水)晴 

午前零時、上番する。下番者田原候補生の報告では、「昨夜午後十時、ニューディリー放送によれば、昨日(八月七日)、米空軍B29百二十機は豊川を空襲し爆撃したと、放送がありました」と。

今日も隊長、上山中尉ともまだおられる。この前隊長は第五航空軍には一機も飛行機はなくなったといわれたが、内地の第一航空軍には遊撃機はあるのだろうか、ないのだろうか心配になる。豊川といえば海軍工廠だが、B29百二十機も来られたんでは、豊川の街全部、蟻の逃げ道もないだろう。ここでも一般弱者への被害が気になる。

隊長は昨日も午前十一時ごろ、連隊長のもとに行かれたそうである。今日も原爆中止の誓願に行くといっておられる。もっとも今日は情報収集の情報室として、一応この戦いの幕引きをすべきだと意見具申をしたいと言われた。

(中略)

「ただ今、北支軍司令部情報室よりの電話によると、これは関東軍よりの電話ですが、本日午後零時を期して、ソ連国境より大量のソ連軍が騎馬部隊、戦車部隊、装甲部隊を前面にしてぞくぞくと南下致し、関東軍と各地において交戦状態に入っており、突然の攻撃と火焔放射器を使っての進攻で、防戦大わらわの状態だそうです」

(中略)

ソ連という国のキタナイキタナイやり方はどうだ。

それにしても昨日の朝、明日の八月九日に長崎に原爆を投下するという情報で、左顔面にビンタを食らったようだと書いたが、今度は右顔面を張られたかと思う間もなく、左右入りまじって殴られるようだ。

人の足元を見るソ連の相手が弱いと思ったら、殴りかかるやり方に腹が立って腹が立ってやり切れぬ。自分は共産党がどんなものか知らぬが、人の弱みにつけ込んで弱い者いじめするのが共産党か、こんな共産党が主導するソ連は、だれが何といおうと大嫌いだ。子や孫の代まで、いや後々の代まで、今日のこの日に参戦したソ連という国のことを、絶対に忘れないでくれよ。午前八時下番する。


(中略)

瞼を閉じれば、広島の街が浮かんでくる。(中略) しかも明日また、長崎にふたたび原子爆弾を投下するというではないか。

(中略)

午後四時、田中が下番してきたので目がさめる。田中の報告では、
「十二時のNHKのニュースでは、『新型爆弾の防御法を内務省は次のごとく国民に指示しております。かならず壕内に退避して下さい。火傷のおそれがありますので、壕外に出るときは露出部を少なく、暑くても全身をおおうようにしてください』というものであった。 原爆投下二日後の放送であって、二日前にこの放送があったら、被害は少なかったろうにと思いました。

その上、明日の長崎の原爆投下に果たして長崎の人は、このNHKの内務省の通達を、自分のこととして聞いているのだろうか疑問に思いました。午後一時のニューディリー放送は、長崎は三十年間、草木も生えぬ被害を受けるであろうと、広島投下前日と同様に放送していました。
以上であります」

(以下略)


黒木雄司 原爆投下は予告されていた 第五航空情報連隊情報室勤務者の記録 p257-260より


c0139575_23445615.jpg


c0139575_07314.jpg


c0139575_084682.jpg

[PR]

by oninomae | 2008-08-08 00:08 | ホロコースト  

<< 原爆ホロコースト:長崎 八月七日(火)晴 長崎原爆投下... >>