「セシウムと心臓疾患の相関関係」ユーリー&ガリーナ・バンダジェフスキーへのインタビュー 1

http://vogelgarten.blogspot.com/2012/01/blog-post_25.html の転載 その1

チェルノブイリ汚染地域の子供を多数診察した結果、放射性セシウムが心臓疾患を引き起こすことを発見したのは、ベラルーシの医師ユーリ・バンダジェフスキーです。

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彼はこの事実を発表した後、1999年収賄疑惑や国家転覆計画疑惑をかけられて投獄され、拷問などにも遭うことになりました。 そのバンダジェフスキー夫妻へのインタビューを見つけたので翻訳しました。発見にまつわる状況について詳しく語られていて、この発見がいかに医学的にも政治的にも重大な意味を持つのかが伝わってくると思います。 オリジナルは映像のようですが、残念ながらフランス語によるスクリプトしか見つかりませんでした。字幕用と思われるスクリプト体のため一部前後関係のわかりにくい部分もありました。ご了承いただければと思います。

ソース

INTERVIEW FILMÉE de Youri et Galina BANDAZHEVSKY Gomel, 5 Avril 2000
http://tchernobyl.verites.free.fr/Tchertkoff/script_youri_galina.htm


このインタビューを実現させたウラジミール・チェルトコフ氏はチェルノブイリの事故処理を行ったリクビダトールの凄惨にして無残な生涯を取材した映画『サクリファイス』の監督だと教えていただきました。映画『サクリファイス』(24分、日・英字幕付き)はこちら で見られます。

http://7016.seesaa.net/article/193306072.html

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ゴメリ、2000年4月5日 Wladimir Tchertkoff によるインタビュー

インタビュアー: 当時の選択を後悔されていますか? 家族問題を引き起こしたようですが。

ガリーナ: どの問題のことですか? 私たちがここに移住して来た時のこと?

インタビュアー: いいえ、お二人が発見をされて、その発見にブレーキを掛けた時のことです。

ガリーナ: 私はブレーキなど掛けていません。一昼夜夫と話し合いをしてどうするかを決めたのです。長い議論でした。まずは家の中で。 それから子供達の邪魔にならないように外に出ました。大声で議論しました。 

インタビュアー: 外で?

ガリーナ: ええ、外のベンチの上で。涙が出るまで。

ユーリー: 普段から私達が科学的な決定をくだすのには激しい議論が伴いました。もしかしたら女性の彼女は家族に面倒が降りかかることになるのを予感していたのかもしれません。

ガリーナ: 夫はテレビ番組に出演する決意をして、私に言ったのです。「どんな風に我々がこうした変容、放射能を原因とする心臓疾患を発見したか、すべてを語るつもりだ。」と。 

それを聞いて私は家に入って泣きました。科学評議会に私達が初めてこの研究結果を提示すると、全員が「ユーリー・イワノヴィッチ、大成功だな!」と拍手をしました。なのに私は涙がこみあげてくるのを感じたのです。再び夫と激論しました。「番組放映後にきっとあなたは手錠をかけられるわ!」と私は言いました。

「何を言ってるんだ!?」と夫。ちょうどその時に監督(スバと言う名です)から電話があったのです。「おめでとう、ガリーナ・セルゲイエヴナ、番組は大成功でしたよ。ユーリーはすべてをはっきり提示してみせた。この番組は国民からも大きな反応を得ること間違いなしだ!」「でも心配なのは...」と私が言うと「何かご不満でもあるのですか?」と聞くので「ええ、もし夫に手錠が掛けられたらガリーナ・セルゲイエヴナはこの世に独りぼっちになってしまいます」と答えました。

すると「何をおっしゃるんです?我々は決してあなた方を見捨てませんよ! 第一そんなことは起こりっこありません。あなたは女性だからあれこれ想像しすぎるんです。」と言う返事でした。「時間が経てばわかるでしょう」と私は答えました。

そして本当に恐れたことが真実となり、私は独り取り残されてしまいました。

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独りきり。私は独りぼっちで空っぽのアパートに帰り、どこから手を付けたらいいのか途方に暮れました。どこに行こう? 誰に会いに行こう? 最初に思いついたのは、何故かわかりませんが、厚生省に行くことでした。私達の大臣に会って、どうしたらいいか、助言をしてもらおうと。厚生省で言われたことは「時期尚早です。いったい何をおっしゃろうと言うのです?」 大臣の控え室で私は言いました「一つだけ言わせてください。バンダジェフスキーは白衣を泥で汚してなどいません。あまり早急に彼を断罪なさらないでください。きっと後悔されることになります。」

答えは「そのことについて話すにはまだ早すぎます。あまりに早すぎます。」 その後スバ監督から電話がありました。「話を聞きました。あなたの電話は盗聴されていることがわかっています。私はいかなる方法でもあなたのお役に立つことはできません。

インタビュアー: それだけ? あらゆるケースに備えて事前にそのように言ったのでしょうね。

ガリーナ: そうです。彼は私達の以前の会話を思い出したのです。それでこう言われました。「あなたの役に立つことはできませんが、よかったらロシアテレビの誰かに電話をすることは出来ます。そしてあなたの電話番号を伝えておきます。後はあなたの思うようになさってください。彼に言うことや、あなたの立場をどう説明するか考えておいてください。泣いて、何かを守ろうとしてもいいでしょう。ただ私はこの問題にはこれ以上関わりたくありません。」

インタビュアー: 空っぽの家に戻ってから、再び旦那様に会えるでまでどれくらいの時間が掛かりましたか?

ガリーナ: 最初に面会を許されたのは... 50日後でした。逮捕から50日後。大変公式なものでした。会った時、夫はすでに入院していました。逮捕から50日後、予審判事が公式に面会を許してくれたのです。

インタビュアー: ずいぶん沢山の門戸を叩かれたことでしょう。

ガリーナ: 数知れない住所を試しました。まず最初に試したのはゴメリのラジオ局です。そこで言われたのは「出来れば我々のところにはいらっしゃらない方が良いです。我々は何も知りたくありませんし、あなたの問題に巻き込まれたくありません。我々は皆仕事が必要ですからね。」次に私は厚生省に行きました。出来る限りンの方法を試みました。

ユーリー: 彼女は考え得るすべての場所に行ったんだ。

ガリーナ: だけどどこも門戸を閉ざしたままでした。そして言われる言葉はひとつだけ「時間に任せなさい。」 (ネストレンコ博士を指しながら) この人物に深い感謝の意を表します。彼だけが初めて何者も恐れずに私に手を差し述べてくれたのです。

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本当は彼ほど私達の状況を恐れなければいけない人間はいないのに。終始私を支えてくれました。助言が必要な時にはミンスクの彼のもとを訪れました。彼は経済的にも助けてくれました。ポケットからお金を出して「どうかこれで何かを買ってください」と言うのでした。

一方他の人々と言ったら...。「夫に荷物を送るために支援してもらえますか」なんて物質的な援助は頼む気にもなりませんでした。

私が望んでいたのはただ一つ:みんなが夫を信じてくれること。夫が十年間に渡って家族を犠牲にしてまで続けた仕事の助手だった弟子達が彼を信じ続けること。夫は十年間に渡って朝の七時から真夜中まで、膨大の量の仕事をこなしていました。祝日にも、私は「どこかに行きましょう」なんて提案出来ませんでした。祝日さえ、働き続けたのです。絶えず仕事、仕事、仕事。その仕事が導いた先がこれでした。

私達が、心臓発作と放射性セシウムの体内への蓄積との間に相関関係のあることを発見した時、家族争議になりました。激烈な争議でした。何故なら私はこの相関関係を認めたくなかったからです。これは発見でした。私達は何か新しいこと、今まで知られていなかったことを発見している真っ最中なのでした。そして夫は「これは事実なのだよ」と私に言い、「二人で一緒にこの相関関係について論文を書くのだ」と言うのでした。彼は論文審査官でしたから。

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インタビュアー: 何故あなたは相関関係を認めたくなかったのですか?

ガリーナ: 私は違う考えだったのです。怖かったから。この発見が怖かった。

インタビュアー: どうして?

ガリーナ: 第一にたぶん、新しいことだったから。

インタビュアー: しかし科学的成功ではないですか?

ガリーナ: 成功ですけど... 私達の国では放射能についてこれほどの公表の行われたことはないのです。

ユーリー: 放射能について語られることはなかったんだ。

ガリーナ: そうなんです。幼児における放射能の影響について語られることはありませんでした。いろいろな国から委員会や検査官が小児科を訪問しに来て「放射能に由来する疾患は見られますか?」と質問するのですが、答えは決まって皆「甲状腺癌」の一辺倒。

インタビュアー: それだけ?

ガリーナ: それだけです。私はゴメリに来てすぐに子供達、年齢の行った子供達の聴診を行いました。そしてすぐ、子供達の間で不整脈があまりに頻発することに衝撃を受けたのです。薬剤調整を施さなければならない子供もいるくらい強度の不整脈です。

不整脈を矯正する治療を受けるためにミンスクまで行かなければならないケースもあります。これはかつては成人だけの問題だったのに、今では子供達がそうした治療を必要としていたのです。グロドノ市にいた頃に子供に不整脈が観察されたら、稀有な現象と捉えられたものでした。稀に見る深刻な事態で、即座に治療が必要とされました。

ところがここゴメリでは、この稀に見る深刻な疾患が、どんどん頻発するようになっていたのです。

私はユーリーと仕事から帰って議論したものでした。ユーリーは「健康な子供達を調べてみよう。幼稚園に通っている子供達だ。」と提案しました。そこで私達はゴメリ保育園の乳幼児を診察しはじめ、彼らの心電図を記録しました。さらにはズロビン、スヴェトロゴルスク、そしてヴェトカ市の子供達を調べました。そうやって私達が発見したのは、健康な子供達の60パーセント以上の心電図に変容の見られることでした。

心電図は病理を記録します。私達はこのデータの隣りに、子供達の器官から測定されたガンマ線の量(これはセシウム137によって放射されるものです)を書き込んで両者を比較してみたところ、明確な一貫性を確認することが出来たのです。不整脈は、セシウムの蓄積が高い子供に現われるのでした。(高いというのは20Bq/kg以上 を考えています。)この不整脈はブロックの形で現われます。ヒス束の右脚ブロックや房室ブロックです。刺激伝道系の障害と心筋の脱分極化障害とが組み合わさっている子供もいました。セシウムの蓄積量が多いほど、心電図に現われる異常は深刻だったり複雑だったりするのでした。

インタビュアー: そして あなたはそうした事実の解明が引き起こす政治的な危険を予測されたわけですね?

ガリーナ: そうなのです。まず私は怖くなりました。そう、家族のことを思って怖かったのです。自分自身の身が怖かったわけではありません。何故なら研究の指導教官は夫だったのですから。私は夫に「ねえ、もしかして急に何かが間違っているとしたら? 私達はどこかでミスをしているのかもしれないわ。世界に向けてこの発見を発表するのに...」 と言いました。彼の答えは「我々がミスをしていることなんて有り得ない。調査のベースになっている心電図の量は膨大だ。」と言うものでした。

ユーリー:  心臓について研究をしているのはガリーナ一人ではなかったことを付け加えておきましょう。私の学部には他の研究者による一連の論文や研究が存在するのでした。私が最新の著書の中で指摘したように病理解剖実験や動物実験も存在します。

インタビュアー:  ではあなたは確信を持ってらしたのですね?

ユーリー:  そうです。こうしたすべての研究に基づいた科学的確信です。しかし放射性セシウムの体内蓄積と心臓疾患の相関関係については、こうした子供達の調査結果をベースに彼女と初めて研究したのでした。例えば心電図の束を取り上げ、その一つ一つに心臓に蓄積した放射性物質の量を記入しました。

[心配そうに] 呼び鈴が鳴った...


ガリーナ: 大丈夫、子供達よ。

ユーリー: こんな感じです。20Bq/kg とか 34Bq/kg ... それからパラメーターに即して分類しました。(グラフを見せながら)このような結果になりました。このグラフが現在の結果を表しているのです。これはベラルーシ全国から集めたデータをもとに実現させました。ゴメリやグロドノだけのデータではないのです。ミンスクや数多くの他の場所も含む膨大な量のサンプルです私達の得た結果によると、キロあたり0~5ベクレル(測定器の誤差も考慮に入れて)前後の被曝量ならば、子供達の80% は心電図にいかなる異常も示しません。セシウムがまったく存在しない場合は、85%の子供達が多かれ少なかれ正常に成長することを保証できます。しかし体内のセシウム量が増加すると、健康な子供の割合は係数に従って減少していくのです。セシウムの量がキロあたり70ベクレルを越えた場合、健常と言える状態の心臓は10%足らずになってしまいます。

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インタビュアー:  この相関関係は一貫しているのですか?

ユーリー:  そうです。あらゆるデータに基づいています。それも因果関係以上の、ほとんど科学的法則と呼んで良いくらいものです。因果関係と言うのは多くの傾向が類似する場合を言いいます。分量と変容との間の因果比率です。このことは以前にも示されていました。しかし現在わかったことは、私がいかなるデータを使用しようと、いかなるグループのデータを取り上げようと、この分量と変容との関係が係数に従って動いていることです。この相関関係の一貫性はすでにひとつの「法則」の要素です。さらに付け加えたいのは、心臓だけでなく脳やその他の器官もおいても、新陳代謝のシステムや酵素の活動の調査を行うと、同じ現象が観察されることです。しかし残念ながら、私には... 我々には今のところそれを証明するための資金がありません。

インタビュアー: 他の器官でもですか?

ユーリー: そうなんです! ところが我々に十分な調査用の器具がないのです。これを調べるには膨大な労力が必要です。私達はまだ発見の扉口に立っているのに過ぎない。ここに私の弟子達の調査の成果が山とあるのにも関わらず。これで全部ではないですが、大部分がここに含まれます。心臓についてそしてその他の内臓についてのデータがここにあるのです。

ガリーナ: セシウムとの関係を表すデータです。

ユーリー: この数年間我々が実現し得たことがこれらの論文の中にあります。私にとっては大変な価値です。本以上の価値です。何故なら論文というものはそれぞれきちんと検証された具体的な一次資料に基づいて書かれるものだからです。非常にレベルが高いものです。

インタビュアー: つまり他の器官についても研究することが出来たのですね?

ユーリー: そうなんです!

インタビュアー: 今心臓の話をしていただきました。そして「残念ながら」とおっしゃるのは...?

ユーリー: 我々は研究が続行できないのです。 大変費用の掛かる研究だからです。例えば免疫システムの研究には非常に高価な特殊な器具が必要です。それから酵素の研究、内部分泌システムや肝臓や腎臓の酵素を研究するには生検も必要です。そして何よりも中枢神経。

インタビュアー: そうした研究はすべてやりかけなのですか?

ユーリー: その通り。 どれ一つ取っても世界中に情報を提供できる重大な研究の糸口なのに。科学研究は無限です。我々があらゆることを発見したなどと言うにはまだ程遠い状況なのです。こうした研究は人々に限りない助けをもたらすはずです。心臓に関して言えば、心臓疾患による死亡者は大変多く、実際に起こっていることが我々にもわかっています。

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インタビュアー: (ガリーナに)あたなは科学的真実を拒絶しようとしていたことをご自分でわかっていらっしゃいましたか?

ガリーナ: はい。 

インタビュアー: 発見しなかった方が良いと思われたのですか?

ガリーナ: ええ... そうです...

インタビュアー: ある意味でご自分を守るために?

ユーリー: 彼女はそれを感じていたんだ。
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by oninomae | 2012-02-02 05:31 | 放射能・ラジオハザード  

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