人間と環境への低レベル放射能の脅威 2 + (食事的)防御法のいくつか

人間と環境への低レベル放射能の脅威―福島原発放射能汚染を考えるために―/あけび書房 2011-07-02 09:46:22
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/03cfe6d28b04a8e518ee6a9d73b8e95c より転載 その2

■スターングラス博士による放射線被曝歴史の概観

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同様に、アーネスト・スターングラス博士[Dr. Ernest J. Sternglass]よる序文も、新規性に富み、放射線被曝の歴史的概要をカバーする読み応えのあるものとなっている。日本語版に寄せた序文も昨年書いてくださり、その中で博士は、日本において原子力政策からの転換をはかることで、ガンの蔓延を食い止め、未来世代の健康を守る大切さを強調している。ちなみに博士は、今回の福島事故後も安否を気遣うメールをいち早くお送りくださった。

博士の「低レベル放射線の人体影響」に対する執念とも言える研究は、広島原爆による放射線影響を過小評価した論文がきっかけであったという。博士は、米国における核実験からの死の灰により、幼児の過剰死が起こっていることをいち早く発表した。その後、原子炉周辺でも同様に過剰死や健康障害が起こっていることも発見し、名著『Secret Fallout』(邦題『赤ん坊をおそう放射能』)を著した。

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その後、米国の著名な統計学者ジェイ. M. グールド[Jay M. Gould]と非営利団体「放射線と公衆衛生プロジェクト(RPHP: Radiation and Public Health Project)」を設立した。

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博士はさらに研究を通じ、一見健康な人々の間でも、学力低下や、免疫力の低下、感染症へのかかりやすさなどで、社会全体としての質の劣化が生じているという理論を展開している。


■不完全な放射線防護基準

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グロイブは、本書の読者を幅広く設定している。初心者のために基礎を提示すると同時に、体制側にある放射線防護機関が発表した文献とそれと対峙する膨大な数の研究論文を通じ、専門家にも読み応えのある議論を展開している。分量的にも体制派と批判派の引用文献が同じくらいの量があり、このような書物は今までなかったと思う。

まず、放射線防護のバイブルともいえる日本の被爆者調査における欠点を指摘し、各国政府などから融資を受けている放射線防護機関の姿勢そのものを批判する。歴史を紐解けば、その時々に「安全である」とされてきた許容量が実は危険であったことが判明したことが、幾度もあったわけであり、このことを我々は忘れてはなるまい。

また現在、放射線による影響は、ガンの発生にばかり注目され、動物実験では立証されていても、人間ではまだ立証されていない遺伝的影響はおざなりになりつつある。グロイブは「遺伝子情報は我々の最も貴重な財産である」、「人類は遺伝的財産をかなりぞんざいに扱っている」とその重要性を強調する。

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同時に「ねずみに頭痛があるかどうかを聞くことはできない」というユーモラスな表現を用いながら、明らかな先天性異常は氷山の一角であること、劣性遺伝は何世代も気づかれないこともあること、様々な疾病に遺伝的要素が存在するということなど、重要な論点の数々にも言及している。

さて、恐ろしいのが非人間的なコストベネフィット計算だ。10ミリシーベルトが引き起こす疾病の費用が1人当たり12~120米ドルとは、なんとも生々しい。 そこには医療費に付随して発生する、「人としての苦悩は計算されていないし、そもそも人の健康問題や命とは、金銭に換えることのできないもの」である。そして、放射線に弱い子供たちや核廃棄物を管理せねばならない未来世代を考えれば、原子力の「受益者と費用負担者は同一ではない」。原子力はまさに将来の世代を無視した技術なのだ。

マンハッタン計画でウラン233とプルトニウムの抽出に成功し、ローレンスリバモア研究所元副所長であった著名な科学者ジョン・ゴフマン[John William Gofman, 1918-2007]博士は、米国原子力委員会から造反し、放射線防護法を「殺人許可証」と呼んだ。

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そして、低線量放射線のリスクを知っている専門家は、「過失と無責任さによる人道に反する罪で、ニュールンベルグのような裁判にかけられる候補者である」とまで言い放っている。


■放射線と健康障害の疫学調査

「放射性降下物による健康障害」の章でグロイブは、自然放射能の存在で人工放射能の放出を正当化することはできない、と前置きする。 そして、スターングラス博士ら複数の科学者たちが、疫学調査により、核実験後に各地で疾病や死亡率が上昇しているという事実を列挙している。その中には、戦前に比べ小児がんが6倍に増えているという、日本癌学会の瀬木三雄氏によるショッキングなデータも含まれている。

さらに、スターングラス博士は、原発の風下における乳児死亡率やガン死亡率の増加を見出した。原発周辺における健康被害の発見は、博士に限られたものではなく、複数の著名な科学者たちにより確かめられていく。

被害についての実相があまり話題にのぼらないスリーマイル島事故[Three Mile Island accident]でも、スターングラス博士は多数の過剰死があったことを見出し、これは数年のちにグールドらが行なった疫学調査でも裏付けられた。

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「第2版のあとがき」にもあるが、グールドとスターングラスによる疫学調査は、さらに米国全体における原子炉周辺の乳ガン、低体重児、免疫不全問題にまで発展されている


■ペトカウ効果とは何か

さて、本書のメインテーマである「ペトカウ効果[Petkau effect]」とは、カナダ原子力公社研究所の医学・生物物理学主任アブラム・ペトカウ[Abram Petkau, 1930-2011]博士が、低線量放射線による分子生物学的な人体影響のメカニズムを説明したものである。

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本書に著されているペトカウが発見した事象を列記する。(ただし訳者らは博士の92の論文を読んだわけでないので、博士の発見は以下に限らない。)

1.放射線によっても生じる活性酸素*1は、細胞膜の脂質と作用して過酸化脂質*2を生成し、細胞を損傷する。

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低線量では活性酸素の密度が低く、再結合する割合が少なく効率よく細胞膜に達し、細胞膜に達すると連鎖反応が起こるため、放射線の影響は低線量で急激に高まる。 

2.上記の事象は、活性酸素を消去する作用のある酵素であるSOD*3を投入すると減少または観察されなくなることから、放射線起因の活性酸素によるメカニズムであることが裏付けられている。

3.個体レベルでは、活性酸素及びその反応によって生じる過酸化脂質などにより、ガン、動脈硬化、心疾患、脳梗塞を含む多くの病気や老化が引き起こされる。

4.ペトカウは人工膜のみでなく、肝細胞膜、白血球膜などを含む生体膜を使った実験でも同様の結果を得ている。

5.人体中のSODなどの酵素や食物中のビタミンやミネラル類などの抗酸化物質は、活性酸素に対する防御機能があり、被曝後の影響低減の可能性となりうる。 


(引用注;活性酸素による細胞障害というのは、現在ではよく知られている知識ですが、ペトカウ効果発見の偉大と言うべき重要点は、細胞の正常性にとって放射線のある程度の高線量を短時間浴びるよりも、生成活性酸素のラジカル再結合が起こりにくい低線量を長時間浴び続ける方が危ないということをはっきり示したことです。 このおかげで、通常のいろいろな抗酸化剤(味噌汁、乳酸菌なども含む)が、(特に慢性的低線量)被ばくに対して防御効果があるだろうと言えることになります

海外ではペトカウ効果は、様々な研究者が引用しており、現在でもペトカウ博士の発見を発展させている研究者もおり、その重要な発見の数々は、今日の研究に引き継がれている。しかし、日本ではペトカウ効果はほとんど知られていない。ただし、ペトカウの発見を部分的に裏付けている研究者も出ており、これら周辺の事項は、あとがきに詳細を述べることとしたい。

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(↑この絵は癌化を示していますが、誘発される疾病は癌だけではありません)

ところで、ペトカウ博士は、自然流産した胎盤においてSOD活動量(医学用語で誘導能)が不足していたという、非常に重大な発見をした。さらに、被曝労働者におけるSOD誘導能の研究途中の1990年、彼が主任を勤める研究所を閉鎖させられてしまった。以後、ペトカウ博士は地元で医師として働き、放射線研究の世界に戻ることは二度となかった。我々は偶然、ペトカウ博士の診療所の連絡先を見つけ、昨年11月、博士の診療所に問い合わせの手紙を送っていた。しかし、そのお返事をいただかないまま、今年の1月、博士は急逝されてしまった。大変ショックで残念なことであった。
 
次ページにペトカウ博士の略歴を添えさせてもらい、心からのご冥福をお祈りしたい。

2011年6月9日  肥田舜太郎、竹野内真理 


*1 活性酸素とは、元来、生体中に存在し、酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称で、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入したとき、殺菌作用によって体を守る役目をする物質である。しかし、増加しすぎると、逆に自分の体の組織をも異物のように攻撃するという、諸刃の剣の性質を持つ。狭義では、O2-(スーパーオキシド)、OH・(ヒドロキシラジカル)、H2O2(過酸化水素)、1O2(一重項酸素)の4種類があり、広義では窒素酸化物、オゾン、過酸化脂質などを含む。

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*2 過酸化脂質は、活性酸素が脂質と反応して生成される物質で、反応は弱いが体外に排出されにくく、組織や細胞の表面や壁に付着し、徐々に外側から内部に向かって細胞を傷つけ破壊し、様々な病気の原因となる。

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*3 スーパーオキシド・ディスムターゼ(SOD: Superoxide dismutase)とは、殺菌能力のある活性酸素であるO2-(スーパーオキシド)が必要以上に産出された時、還元(引用注:正確には「酸化還元」)によって除去する酵素で、銅-亜鉛SOD、マンガンSOD、鉄SODの三種類がある。

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O2-(スーパーオキシド)は反応性が比較的低いが、微量の鉄や銅などの遷移金属と共に障害性の強いOH・(ヒドロキシラジカル)を発生させる。そのため、活性酸素発生の最上流に位置するO2-(スーパーオキシド)を消去するSODの役割は大きい。

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以下引用者追加:細胞膜の酸化破壊を抑えるには、ビタミンE、ビタミンCなどの抗酸化剤と、そして以下のグルタチオンペルオキシダーゼ反応などが極めて重要です。(もちろん、結局は、遺伝子の破壊を抑えることにもつながります)

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ビタミンEは脂質過酸化ラジカルをブロック

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ビタミンCで、ビタミンEをリサイクル。 酸化型ビタミンCはもちろん再活性化可能

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過酸化脂質(ハイドロパーオキサイド)は、グルタチオンが処理(酵素グルタチオンパーオキシダーゼが触媒)

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アスタキサンチンや、リコピンなどもお役立ち

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NACというのは、N-アセチルシステイン[N-acetyl-L-cysteine] のことです。

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グルタチオンなどについて、もっと述べると;
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危険な過酸化脂質を還元分解するグルタチオンペルオキシダーゼ[glutathione peroxidase]反応

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GSSGになるだけなら、グルタチオン(GSH)はリサイクル可能


グルタチオンの放射線防護作用とその応用 / 永田, 弘治 / 西田, 寿男 / 菅原, 努 / 田中, 富蔵
http://ir.library.osaka-u.ac.jp/metadb/up/LIBLSK001/JJRS-26-8-975-978.pdf

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タウリンの放射線防護作用についての実験的研究 / 菅原, 努 / 永田, 弘治 / 田中, 富蔵
http://ir.library.osaka-u.ac.jp/meta-bin/mt-pdetail.cgi?flm=0015450312677540&smode=0&cd=00021777&edm=0&tlang=1

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なんにせよ含硫アミノ酸システインが重要です。卵には多いです。放射線を浴びた後尿中にタウリン排泄が増えるのは、システインが活性酸素と反応・消去している可能性が高いです。また、グルタチオンもシステインから合成しており、グルタチオンには活性酸素種除去効果の他、金属キレート効果も期待できます。(タウリンにもシステインにも金属イオンキレート効果はありますが)

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そして、体内GSHレベルを上げてくれるのは;

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α-リポ酸[α-lipoic acid]が有名です。サプリで売っていますよ。


乳酸菌と放射能 U・ェ・Uノ ちわわのひとりごと
http://apocalypsenow.jugem.jp/?eid=107#sequel

ミネラル含有熱処理酵母に放射線防護効果を確認、被ばく後投与でも

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亜鉛酵母、いいですね


配糖化アスコルビン酸というものもあります。長時間効果が持続。航空機搭乗員も飲んでいるとか。棺桶政権も棺桶テレビも言わないようですが。

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味噌も大いに還元力供給を促進してくれます
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以下は、最近の論文例など

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21520614

・・・It is shown that some elements--zinc, manganese, cobalt--being appled to the soil at seeding or spraying plants with aqueous solutions and also in complex compounds are capable of reducing significantly the 90Sr and 137Cs transit to agricultural plants, and with forage--into the animals bodies. We have also shown that trace elements reduce the effects of radiation injury. The mechanisms of the radioprotective action of trace elements are also discussed in the paper.

Antioxidant dietary supplementation in mice exposed to proton radiation attenuates expression of programmed cell death-associated genes.

Allylmethylsulfide Down-Regulates X-Ray Irradiation-Induced Nuclear Factor-kappaB Signaling in C57/BL6 Mouse Kidney.


関連

Oxidative Stress in Toxicology: Established Mammalian and Emerging Piscine Model Systems
http://ehp.niehs.nih.gov/realfiles/members/1998/106p375-384kelly/kelly-full.html

Committee For Nuclear Responsibility
http://www.ratical.org/radiation/CNR/

内部被曝とペトカウ効果。医師肥田舜太郎さん講演「58年間ヒバクシャを診てきた」、レイモンド・カーヴァー「癌患者になった郵便配達夫」
http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1513630.html

原発を考える 18 ペトカウ実験
http://kojimataka.jugem.jp/?eid=84

放射線の人体に対する影響の医学的な解明を阻んでいた壁の一つは、放射線に対する細胞膜の強大な障壁だった。アブラム・ペトカウは一九七二年、マニトバにあるカナダ原子力委員会のホワイトシェル研究所で全くの偶然から、ノーベル賞に匹敵する次のような大発見をした。即ち、「液体の中に置かれた細胞は、高線量放射線による頻回の反復放射よりも、低線量放射線を長時間、放射することによって容易に細胞膜を破壊することができる」ことを実験で確かめたのである。  ・・・略・・・ 彼は何度も同じ実験を繰り返してその都度、同じ結果を得た。そして、放射時間を長く延ばせば延ばすほど、細胞膜破壊に必要な放射線量が少なくて済むことを確かめた。こうして、「長時間、低線量放射線を照射する方が、高線量放射線を瞬間放射するよりたやすく細胞膜を破壊する」ことが、確かな根拠を持って証明されたのである。これが、これまでの考えを180度転換させた「ペトカウ効果」と呼ばれる学説である。

低線量の長時間による被曝の脅威について 投稿者 ペリマリ 日時 2011 年 7 月 30 日 15:33:47
http://www.asyura2.com/11/genpatu14/msg/916.html (本文引用あり)

ペトカウ効果という言葉は知っているかな?‐ラルフ・グロイブ 投稿者 ペリマリ 日時 2011 年 7 月 31 日 12:50:44
http://www.asyura2.com/11/genpatu15/msg/116.html

The Petkau effect(extended low dose radiation dangerous to cellural membranes)
http://www.nuc.berkeley.edu/node/2947
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by oninomae | 2011-08-06 02:03 | 放射能・ラジオハザード  

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